24/01/11 モーツァルトの魅力が更に深まるひととき、日本モーツァルト協会 第655回例会 ~ジングシュピールの世界~を聴きに行ってきました。

氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。

01月09日に東京文化会館小ホールにて行われた日本モーツァルト協会の演奏会を聴きに行ってきました。プログラムには個人的に思い入れ深いあの曲が!?演奏会の様子などをまとめていきたいと思います。


今回ご紹介する演奏会はこちらです↓

日本モーツァルト協会 第655回例会 ~ジングシュピールの世界~

日時 2024年1月9日(火)開演18:45

会場 東京文化会館小ホール

出演 

大西 宇宙(バリトン)

中江 早希(ソプラノ)

村上 寿昭(ピアノ)

演奏曲目

<フィガロの結婚>K492より
スザンナとフィガロの二重唱「5・・10・」(大西、中江)

<オルムスの王アクスール>より(A.サリエリ)
アクスールのアリア「卑しく哀れな異邦人」、「臆病者の偶像よ」(大西)

カンタータ「オフェーリアの健康回復によせて」K477a(中江)
(ダ・ポンテ、サリエリ、モーツァルト、コルネッティの共作)

<ドン・ジョヴァンニ>より(G.ガッツァニーガ)
ドンナ・エルヴィーラとパスクアリエッロの二重唱「イタリアやドイツでは」(大西、中江)
<ドン・ジョヴァンニ>K527より(モーツァルト)
レポレッロのアリア「カタログの歌」(大西)

ドンナ・エルヴィーラのアリア「あの恩知らずは私を裏切って」(中江)
【休憩】


<劇場支配人>K486より
マダム・ヘルツのアリエッタ「別離の時に鐘は鳴り」(中江)

<バスティアンとバスティエンヌ>K50より
コラとバスティエンヌの二重唱「私が与えた忠告を」(大西、中江)


<魔笛>K620より パパゲーノのアリア「俺は鳥刺し」(大西)


<ツァイーデ> K344より
ツァイーデのアリア「虎よ、そのまがった爪で捕らえた獲物を早く殺せ」(中江)
アラツィムのアリア「大胆に試せ幸運を、諦めず気を出せ」(大西)

<後宮からの逃走>K384より
コンスタンツェのアリア「あぁ!私は恋し、本当に幸せでした」(中江)

<魔笛>K620より
パパゲーナとパパゲーノの二重唱「パパゲーナ!〜パパパ」(大西、中江)

(アンコール)
<ドン・ジョヴァンニ>K527より
ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重唱「あそこで手を取り合って」(大西、中江)

(敬称略)

会場に到着。

前回の東京文化会館での第九公演は大ホールでしたが、今回は小ホールということで、大ホールエントランスの左手側のスロープをのぼり小ホール入り口へ向かいます。

会場にはほぼ満席状態になるほどのお客様が入場されていました。ロビーではドリンクサービスとCD販売コーナーがありました。今回CDを購入すると、終演後のサイン会にてサインが貰える特典がありました。大西さんのCDにサインが欲しいなと思ったときには時すでに遅しで、すごい人気で在庫分が完売していました。また次の機会を待つことにします。

なお中江のサイン入りCD、実はオンライングッズショップにて販売中です。ハイドンのCDは在庫わずかなのですが、今回買えなかったという方も是非ご検討いただけますと幸いです。

 

演奏を聴いて


二年前のこちらの定例会の評判がとても良く、今回同じメンバーでの公演ということでとても楽しみにしていました。

一曲目のフィガロの結婚では幸せ感溢れる二重唱が村上さんの軽快なピアノに乗せて歌われます。コンサートなのですが、演技付きで演奏され、東京文化会館小ホールの豊かな響きも素晴らしく、温かな雰囲気でコンサートが開演しました。

プログラムの間にはトークも挟まれ、どうしてこの曲を取り入れたのかという説明や、この演奏会で演奏するためにオーケストラ用の手書き譜からピアノ伴奏用になおしたり、海外で出版されたばかりの楽譜を取り寄せたりといった演奏会にかける思い入れの強さをうかがえるエピソードも紹介されました。

大西さんの歌は何度も聴いたことがありますが、トークを聞くのは初めてでした。話し方や、話の展開の順序立てがとても素晴らしく、トークも凄いなと思いました。また、村上さんと二人で一緒に話すときの雰囲気にお互いの信頼関係が伝わってきてとても好感が持てました。

なおトークの中で、大西さんの歌われた《オルムスの王アクスール》がアマデウスの映画に出てきたという紹介がありまして、「僕の話を聞いて映画をまた観たくなったでしょ?」と笑顔で言われると観たくなってしまい、YouTubeで探したところ該当箇所の映像が見つかったのでリンクを貼っておきます。

モーツァルトのドン・ジョヴァンニは有名ですが、モーツァルトが作曲する前にガッツァニーガという作曲家が同じ題材を用いてオペラを作曲しています。このガッツァニーガの公演をモーツァルトが観て発想を得たということで、演奏会では2つのカタログの歌を並べて聴くという面白い試みがなされました。

ガッツァニーガのカタログの歌はドンナ・エルヴィーラとの2重唱になっており、編成的には豪華なはずなのですが、モーツァルトのカタログの歌というコミカルさと優美さを兼ね揃えた名曲の前では、引き立て役のように感じた方もいらっしゃっただろうなと、少しガッツァニーガさんに同情しました。

なおレポレッロのカタログは中江の手作りで、金のシールでドン・ジョヴァンニのカタログと書いてありました。

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村上さんのトークの中でこのガッツァニーガのドン・ジョヴァンニの全曲演奏に携わったと少し触れられていたのですが、その公演で僕は騎士長を演じました。

次の演目はドン・ジョヴァンニですと発表があったときに喜んだのですが、「ガッツァニーガのね♪」と言われたときに「???」となったのを今書きながら思い出しました。おそらく新国立劇場の情報センターに全幕映像が残っていると思うのですが、興味のある方は是非初台にお越しの際に訪ねてみてはいかがでしょうか。

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前半最後のプログラムでは中江がドンナ・エルヴィーラの2幕のアリアを歌い、拍手喝采の中休憩に入ります。中江がドン・ジョヴァンニに出演するときは、ドンナ・アンナ役を演じるので、エルヴィーラのアリアが聴けたのはかなりレアな演奏会だったのではないでしょうか。

後半では中江のコロラトゥーラソプラノとしての本領が発揮され、アジリタの超絶技巧が光ります。音が軽快にまわるだけでなく、最高音部分も巧みにコントロールされ持ち前の表現力を惜しみなく披露しました。特に最後の後宮からの逃走のアリア終盤の繰り返しは圧巻の一言でした。なかなかあの難所をあそこまで歌いわけられる歌手はいないと思います。

最後は魔笛、パパパの二重唱で締めくくられます。大西さんのパパゲーノはとても親近感があり、会場からは笑いも起きていました。村上さんのピアノの遊び心も加わり、さみしげなパンフルートの音の後、パパゲーナのアクセサリーを身に着けた中江が登場。幸せいっぱいな雰囲気で大満足のなか終演しました。

拍手が鳴り止まずアンコールへ、最後は有名な曲でとドン・ジョヴァンニより2重唱。約2時間のプログラムはモーツァルトが更に大好きになる、素晴らしい演奏会でした。帰り道にドン・ジョヴァンニの旋律を歌いながら駅に向かう方がいらっしゃったりと、心に残る名演揃いの内容でした。

 
(大西さんの胸ポケットにもパパゲーノの羽のアクセサリー。中江のへアバンドにも同じく羽があしらわれています/ 撮影 氷見)

大西さんのパパゲーノを全幕観たい!となった方、こちらの演奏会はいかがでしょうか?(氷見、中江は出演しません。)

 

鈴木優人&バッハ・コレギウム・ジャパン×千住博 モーツァルト オペラ《魔笛》

公演日 2024年2月21日(水)~2024年2月25日(日)

会場 めぐろパーシモンホール 大ホール

時間 

2/21(水)18:00開演

2/22(木)14:00開演

2/24(土)14:00開演

2/25(日)14:00開演

(2/23休演、開場は各日開演45分前)

指揮:鈴木優人
演出:飯塚励生
美術:千住博
衣裳:高橋悠介
映像:ムーチョ村松

タミーノ :イルカー・アルカユーレック
パミーナ :森 麻季
ザラストロ:平野 和
夜の女王 :モルガーヌ・ヘイズ
パパゲーノ:大西 宇宙
パパゲーナ:森野 美咲
モノスタトス:新堂 由暁
侍女Ⅰ  :松井 亜希
侍女Ⅱ  :小泉 詠子
侍女Ⅲ  :坂上 賀奈子
童子Ⅰ  :望月 万里亜
童子Ⅱ  :金持 亜実
童子Ⅲ  :高橋 幸恵
弁者   :渡辺 祐介
僧侶Ⅱ・武士Ⅰ:谷口 洋介
僧侶Ⅰ・武士Ⅱ:山本 悠尋

管弦楽&合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン