24/01/29 東北最大級の収容数を誇るやまぎん県民ホールが感動に包まれる。山形交響楽団さんの演奏会形式オペラシリーズ Vol.2「椿姫」を鑑賞してきました。

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2024年01月28日、山形へ向かいまして、山形交響楽団さんの特別演奏会、演奏会形式オペラシリーズ Vol.2「椿姫」を鑑賞してきました。初めて伺ったやまぎん県民ホールのこと、そして椿姫を鑑賞しての感想などお届けしたいと思います。

今回ご紹介する演奏会はこちら

演奏会形式オペラシリーズ Vol.2「椿姫」

日程 2024年1月28日(日)

時間 15:00開演(14:00開場)

会場 やまぎん県民ホール 大ホール 

演目 ヴェルディ:歌劇「椿姫」(演奏会形式)

出演

指揮:阪 哲朗

ヴィオレッタ:森谷 真理(ソプラノ)

アルフレード:宮里 直樹(テノール)

ジェルモン:大西 宇宙(バリトン)

フローラ:小林 由佳(メゾソプラノ)

ガストン子爵:新海 康仁(テノール)

ドゥフォール男爵:河野 鉄平(バス)

ドビニー侯爵:深瀬 廉(バリトン)

医師グランヴィル:井上 雅人(バリトン)

アンニーナ:在原 泉(アルト)

ジュゼッペ:西野 真史(山響アマデウスコア)

使者:鈴木 集(山響アマデウスコア)

フローラの召使い:土田 拓志(山響アマデウスコア)

管弦楽:山形交響楽団

合唱:山響アマデウスコア

合唱・バンダ:山形県立山形東高等学校 音楽部・吹奏楽部

舞台構成・演出:太田 麻衣子

副指揮:中橋 健太郎左衛門

主催  公益社団法人山形交響楽協会

共催 山形県総合文化芸術館 指定管理者 みんぐるやまがた

初めてのやまぎん県民ホールへ

やまぎん県民ホールは2020年5月に開館したばかりの新しいホールで、山形駅西口から歩いてすぐの好立地にありました。ホールだけでなく、スタジオや練習室、ショップも併設されていました。

ショップの名前が0035KIYOKAWAYAだったのですが、35とはなんだろうと調べてみると、山形県の市町村の数が35あるそうで、そこから命名されたそうです。とてもおしゃれな空間で、多くの人が訪れていました。時間の関係で伺えませんでしたが、次の機会には絶対に見に行きたいです!

客席数約2000席という大ホールは後ほど演奏にも言及しますが、音響の素晴らしいホールだなと思いました。これだけの大空間にもかかわらず響きで音像がぼやけず、表現のニュアンス一つ一つが鮮明に堪能することができました。

オーケストラピットも使用することができ、本格的なオペラ公演も可能とのことで、日生劇場のセビリアの理髪師など公演されているようでした。

中でも座席の美しさに目を奪われる。

客席椅子について

座席に向かうと木目の優しさや、背もたれの美しいカーブ、赤色の座面には織物で柄が描かれ、伝統工芸品を鑑賞しているような気持ちになりました。座席もとても座りやすく快適で、調べてみるとこちらの椅子はかなりこだわり抜いて作られているようでした。

手すり、背もたれには山形のすぎ、ぶなが使用され、山形を代表する家具メーカー【天童木工】さんの加工技術によってこの美しいカーブが実現したとのことです。一度見ただけで目を奪われたこの背もたれは、デザインだけでなく、音の抜け方まで考慮された機能性のあるフォルムとなっているそうです。

座席の張地は山形を象徴とする紅花染めから赤色が採用されたそうです。山形県で栽培されている紅花は「最上紅花」と呼ばれ、江戸時代から栽培が盛んであったことから山形県の県花となっています。

座面模様は米沢織物の産地と共に制作したオリジナルデザインだそうです。山形県内に伝わる日本三大刺し子のひとつである「庄内刺し子」をモチーフとしたパターンを採用し、吉祥を意味する亀甲紋様に、豊作・魔除け、商売繁盛などを表す模様が組み合わされているとのことでした。

この張地は米沢織の認証を受けているそうで、前情報がまったくない状態で見ても、素晴らしいと思える素敵な椅子でした。

演奏を聴いて

合唱団はブラウスやネクタイの色を統一せずにカラフルな衣装で登場。コンサートマスターの髙橋 和貴さんの登場でさらに大きな拍手が起きます。

序曲が始まるとそこはもう歌劇場に。チェロの豊かな響きが印象的で、会場を包み込みます。

今回は演奏会形式とチラシに掲載されるも、衣装にもこだわり、オーケストラを囲む動線に作られたスペースを利用して演技付きで歌唱されるなど、大道具セットを用いないこと以外はオペラ公演と変わりないという豪華な仕様でした。

テーブルや椅子などの中道具も用意され、空間を生かした太田 麻衣子さんのステージングが光ります。

今回は一階席の真ん中あたりで聴かせて頂いたのですが、オケ前の位置での歌手の歌唱を聴いたときに、このホールの真骨頂はこの立ち位置なのかなと思いました。演奏会形式のオペラ演奏会の醍醐味は最高の音響で最高の音楽を楽しむことと思っていまして、まさにこの音響だと歌の表現力に引き込まれました。

阪 哲朗さんの指揮は椿姫のストーリーの流れをとても大切にしているように感じられました。曲間の間のあけ方が絶妙で、ドラマが継続しているなかで、歌手の感情の動きを妨げることなくドラマを紡いでいく様は圧巻でした。

ストーリー性だけでなく、音楽でも歌手の聴かせどころをオーケストラと一体となって引き立て、アリア終わりの拍手も大盛りあがりでした。

合唱を担当した山響アマデウスコアより数名キャストとしても参加しており、中でも驚いたのが、フローラの館のシーンでタンバリンを奏でながら歌う方が!!見かけによらずタンバリンって結構難しいのですが、タイミングもバッチリでした。器用な方もいらっしゃいますね♪

(↓タンバリンの奥深さを紹介する上でこちらのツイートを思い出しました)

そして最後の最後に泣いた

何度も椿姫は鑑賞しているので、大丈夫だとは思っていたのですが、3幕の森谷 真理さん演じるヴィオレッタと宮里 直樹さん演じるアルフレードの二重唱《パリを離れて》から最後までは涙なしでは観ることができませんでした。

静寂であった会場に鼻をすする音が聞こえたと思ったら隣の方も大号泣されてました。とてもメッセージ性のある舞台になっており、心に直接訴えられるというか、すっと寄り添ってくれるといいますか、ヴェルディの音楽を余すことなく堪能できた素晴らしい体験でした。

先日伺ったモーツァルト協会655回定例会で鑑賞した大西 宇宙さんのジェルモンもかっこよく、最初に登場された時のコートの素敵な着こなし、素晴らしいアリア《プロヴァンスの海と陸》の歌唱も貫禄を伴った深い歌唱でとても素敵でした。

そして、ガストン子爵を演じられた新海 康仁さんや、ドゥフォール男爵を演じられた河野 鉄平さんの所作、演技力が素晴らしく、シーン作りには欠かせない存在になっていました。役の出番の多い少ないに関わらず、すべての布陣にこだわられたキャスティングがされているのもこのオペラシリーズの魅力のひとつなのかなと感じました。

最後に

東京から山形まで新幹線で約2時間半という距離ですが、やまぎん県民ホールはその時間をかけて出向く価値のある素晴らしいホールだと感じました。僕の大絶賛した座席もぜひ座ってみてきていただきたいです。

この演奏会形式オペラシリーズはラ・ボエーム、椿姫と続き、次回は来年2月にトスカを上演する予定とのことです。今回に引き続き森谷 真理さん、宮里 直樹さんが出演されます。ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?

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