ヴェルディ《マクベス》バンコーとは?〈Come dal ciel precipita〉の歌詞・IPAと聴きどころ

どうも、氷見健一郎です。

オペラ《マクベス》には、王冠を手にする主人公と、その王冠を脅かす「未来」を背負った人物が登場します。

その人物が、バスの役であるバンコーです。

彼自身が王になるという予言を受けたわけではありません。それなのに、マクベスは彼を恐れ、ついには命を奪おうとします。権力を握ることと、安心して生きることは、まったく別なのですね。

今回は、ヴェルディとシェイクスピアの関係、バンコーの人物像、そして彼のアリア**〈Come dal ciel precipita〉**を紹介します。歌詞の日本語訳とIPAも掲載するので、鑑賞にも、歌詞を読み込む際にも役立てていただければ嬉しいです。

※物語の重要な展開に触れます。以下ではイタリア語台本の「Banco」をバンコー、息子の「Fleanzio」をフレアンツィオと表記します。原作ではそれぞれBanquo、Fleanceです。

《マクベス》は、どんなオペラ?

舞台はスコットランド。将軍マクベスは魔女たちから王になると予言され、妻に促されて国王ダンカンを殺し、王位に就きます。しかし、手に入れた地位を失う恐怖から、さらに犯罪を重ねていきます。

一緒に予言を聞いたバンコーに告げられるのは、**「自分は王にならないが、王たちの祖先になる」**という未来。マクベスにとっては、自分の王冠を、その先の世代で他人の血筋に奪われることを意味します。

野心、夫婦の結びつき、罪の意識、そして未来を支配しようとする人間の弱さ。《マクベス》は、超自然的な出来事を入り口にしながら、人間の心の奥へ踏み込んでいく作品です。

項目内容
作曲ジュゼッペ・ヴェルディ(1813–1901)
原作ウィリアム・シェイクスピアの悲劇《Macbeth》
台本フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アンドレア・マッフェイの協力
初演1847年3月14日、フィレンツェのペルゴラ劇場
改訂版初演1865年4月21日、パリのリリック劇場
バンコーの声種バス
今回のアリアの位置第2幕、城が遠くに見える庭園。バンコー暗殺の直前

成立と版の情報は、デイヴィッド・ロートン校訂によるリコルディの批判校訂版案内、歌詞と場面はスカラ座の公開台本を参照しています。

ヴェルディが、シェイクスピアに見つけた音楽劇

《椿姫》《アイーダ》などで知られるヴェルディですが、《マクベス》を初演したときは33歳。これは、彼が初めて完成させたシェイクスピア原作のオペラです。

メトロポリタン歌劇場の解説によると、ヴェルディはカルロ・ルスコーニによるイタリア語の散文訳を読み、自ら劇の構成を詳しく考え、それをピアーヴェが詩の台本に整えていきました。マッフェイも、魔女や夢遊病の場面などの修正に関わっています。

つまり、原作の有名な場面を選んで歌を付けただけではありません。どの言葉を残し、誰に歌わせ、どの瞬間に音楽を広げるかという、舞台の組み立てそのものにヴェルディが深く関わった作品です。

たとえば、原作の3人の魔女は、オペラでは合唱になります。一人ひとりの怪しい予言が、舞台全体を取り巻く声へと拡張されるわけです。言葉で読む恐怖が、音に囲まれる恐怖に変わる。この変換が、オペラならではの面白さだと思います。

出典:The Metropolitan Opera「Macbeth: Plot and Creation」

1847年版と1865年版がある

《マクベス》には、フィレンツェで初演された1847年版と、パリ上演に向けて手を入れた1865年版があります。

リコルディの解説によれば、パリのための仕事は単なるバレエ追加にとどまらず、作品の広い範囲に及ぶ改訂になりました。現在の鑑賞では1865年版が重要ですが、1847年版を取り上げる公演や、初版の音楽を一部組み込む上演もあります。

同じ《マクベス》でも、録音によって終盤の印象などが異なるのは、そのためです。聴き比べる際は、歌手だけでなく「どの版か」にも目を向けると発見があります。

ボーイトは、どのように関係している?

ヴェルディとシェイクスピアを語るとき、欠かせないのがアッリーゴ・ボーイト(1842–1918)です。

ただし、《マクベス》の台本を書いたのはボーイトではありません。彼が台本を担当したシェイクスピア原作のヴェルディ作品は、後年の《オテッロ》(1887年)と《ファルスタッフ》(1893年)です。

ボーイトは詩人・台本作家であると同時に、オペラ《メフィストーフェレ》の作曲者でもありました。言葉と音楽の両方から舞台を考えられる人物だったわけです。

ここには少し面白い接点もあります。ボーイト記念委員会の伝記によると、彼は女優エレオノーラ・ドゥーゼのために、シェイクスピアの《マクベス》そのものを翻訳しています。「ヴェルディのオペラの台本」と「シェイクスピア劇の翻訳」は、別の仕事なのです。

《マクベス》から《オテッロ》《ファルスタッフ》へ。協働する文学者が変わっても、シェイクスピアの人物を音楽によって生きさせようとするヴェルディの関心は続いていきます。

出典:Comitato Nazionale per le celebrazioni del centenario della scomparsa di Arrigo Boito「Biografia」、リコルディ「Verdi – Critical Editions」

歴史のマクベスと、シェイクスピアの《マクベス》

物語の歴史的背景を理解するときは、11世紀のスコットランド、17世紀のシェイクスピア、19世紀のヴェルディという三つの時代を分けて考えると整理しやすくなります。

歴史上のマクベスは、1040年から1057年までスコットランドを治めた王です。英国王室の歴史紹介では、ダンカンは城で眠っているところを殺されたのではなく、戦いで命を落としたと説明されています。劇の筋書きを、そのまま歴史上の事実として読むことはできません。

シェイクスピアが《マクベス》を書いたのは、一般に1606年ごろと考えられています。当時のイングランド王ジェームズ1世は、スコットランド王ジェームズ6世でもありました。

フォルジャー・シェイクスピア図書館の編集者、バーバラ・モワットとポール・ワースティンは、この国王とスコットランド、魔女、王位をめぐる問題が、作品の背景として重要であることを説明しています。ただし、「国王を喜ばせるためだけに書かれた」と一つの動機に決めつけるのは避けたいところです。

さらに、原作の重要な資料となったホリンシェッドの『年代記』では、バンコーはダンカン殺害の共犯者として描かれています。シェイクスピアは、これを大きく変えました。ジェームズ王の家系がバンコーにつながるとされた伝承も、この変更を考えるうえで意味を持ちます。ただし、これは王朝の系譜伝承であり、バンコーの実在や血統が歴史的に証明されたという意味ではありません。

ヴェルディは、そのシェイクスピア劇をさらに音楽へと移し替えます。一人の人物には、史実、伝承、劇作家の選択、作曲家の解釈が幾重にも重なっているのです。

出典:The Royal Household「Macbeth (r. 1040–1057)」、Mowat/Werstine「About Shakespeare’s Macbeth」、Royal Shakespeare Company「Dates and sources」

バンコーは「善良な友人」だけではない

同じ予言を聞きながら、別の道を歩く人

バンコーは、マクベスとともに戦う将軍です。二人は同じ魔女に出会い、ともに未来を告げられます。しかし、その受け止め方は同じではありません。

オペラの第1幕にも、邪悪な力は真実を語って人を欺くことがある、というバンコーの台詞があります。ただし、彼がマクベスに直接語りかけるのではありません。

魔女たちの予言のあと、使者がマクベスをカウダー領主に任じたと告げ、予言の一つが現実になった場面で、台本はバンコーに「fra sé(傍白)」と指定しています。観客には聞こえますが、劇中のマクベスへの忠告ではないのです。

バンコーは「邪悪な霊は真実を語って私たちを欺き、その霊が掘った深淵の上に、私たちを呪われたまま置き去りにする」と歌います。予言が当たったからといって、その声を信じ切るのは危うい——これがバンコーの考えです。

傍白として観客にだけ明かされるこの慎重さが、予言に心を揺さぶられるマクベスとの対比を生んでいます。

マクベスが恐れるのは、バンコーの「未来」

マクベスは王になっても、バンコーの子孫が王になるという予言から逃れられません。

バンコーは、今この瞬間に王位を奪いに来る敵というだけではなく、マクベスの支配が永遠ではないことを示す存在です。そのため、暗殺の標的は父親だけでなく、息子にも向けられます。

この構図を頭に置くと、アリアの場面で父子が一緒にいることの意味が変わります。隣を歩く息子は、守るべき家族であり、マクベスが消し去りたい未来でもあるのです。

〈Come dal ciel precipita〉は、どこで歌われる?

このアリアは、第2幕、宴会が始まる前の庭園で歌われます。スカラ座の台本では第2幕第4場に当たり、遠くにマクベスの城が見えると指定されています。

直前には刺客たちの場面があります。観客は、すでに暗殺が準備されていることを知っている。一方のバンコーは、危険の正体までは分からず、不吉な感覚に包まれています。

そこで息子に語りかけるのが、アリアに先立つ言葉です。

「急いで歩くのだ、息子よ。この暗闇から出よう」

やがて彼は、深まる闇を見つめ、ダンカン王が殺された夜を思い出します。過去の殺人の記憶と、これから自分に起こるかもしれない出来事が、短い歌の中で重なります。

アリアのあと、父子は庭園の奥へ去り、舞台裏からバンコーの叫びが聞こえます。息子に逃げるよう命じる声です。バンコーは殺されますが、フレアンツィオは逃れます。

宴会で幽霊になってから歌う曲ではありません。生きているバンコーに与えられた、最後のまとまった独白です。

シェイクスピア原作で対応する暗殺は第3幕第3場。オペラの幕番号とは異なります。原作では短いやり取りのうちに襲撃が起こるところを、オペラは独白として広げ、観客が父親の不安に耳を傾ける時間を作っています。

出典:スカラ座台本・第2幕第3〜4場、シェイクスピア《Macbeth》第3幕第3場/Folger Shakespeare Library

歌詞と日本語訳——闇の描写から、心の中へ

イタリア語原文はスカラ座の公開台本を基準とし、日本語訳は本記事のために作成しました。表は台本の本文順です。実際の歌唱では、楽譜に従って言葉を繰り返す箇所があります。

前のレチタティーヴォ〈Studia il passo〉

イタリア語日本語訳
Studia il passo, o mio figlio!急いで歩くのだ、息子よ!
Usciam da queste tenèbre…この暗闇から出よう……。
Un senso ignoto nascer mi sento in petto言い知れぬ感覚が、胸の中に生まれてくる。
pien di tristo presagio e di sospetto.不吉な予感と疑念に満ちた感覚が。

「Studia il passo」は、現代語の「勉強する」から想像すると戸惑いますが、ここでは「歩みを速める」という意味です。トレッカーニのルイジ・ブラスッチによる語義解説にも、同じ表現の「急がせる」という用法が示されています。

アリア〈Come dal ciel precipita〉

イタリア語日本語訳
Come dal ciel precipitaなんという勢いで、空から降りてくるのか、
l’ombra più sempre oscura!ますます深くなる、この闇は!
In notte ugual trafisseroこれと同じような夜に、刺し殺されたのだ、
Duncano, il mio signor.我が主君ダンカンは。
Mille affannose immagini数知れぬ、不安をかき立てる幻影が、
m’annunciano sventura,私に不幸を告げ、
e il mio pensiero ingombrano私の心を満たしていく、
di larve e di terror.亡霊のような幻と恐怖で。

冒頭の Come は、ここでは驚きや戦慄を伴う「なんと……なのか」。また、ciel はcieloの詩的な短縮形で、この場面では頭上の空と読むと自然です。「天国から何かが落ちてくる」という話ではありません。

larve は、この文脈では亡霊や不気味な幻影を表します。歌詞は、外の景色である「闇」から、記憶、予感、そして頭の中を占める幻へと進んでいきます。

その直後の叫び

Ohimè! Fuggi, mio figlio!… O tradimento!

ああ! 逃げろ、息子よ!……裏切りだ!

これはアリアの本文とは区別される、襲撃時の言葉です。しかし、ここまでを一続きで聴くと、「不吉な予感」が現実になる瞬間と、父親としての最後の行動がつながります。

語義の参考:Luigi Blasucci「Studiare」/Treccani, Enciclopedia Dantesca

歌詞のIPA——イタリア語の音を確かめる

以下は、イタリア語の標準的な舞台発音を目安にした本記事作成の広い音声表記です。特定の歌手の録音を採譜・転写したものではなく、既刊のIPA対訳の転載でもありません。

ˈ は直後の音節の強勢を表します。重子音は tt、ll などで示し、ʎʎ・ɲɲもその長さを意識する表記です。母音を音符上で伸ばす長さや、すべての語境界の同化・統語的重子音化は表していません。歌う際の音節配分と反復は、使用する楽譜で確認してください。

レチタティーヴォのIPA

歌詞IPA
Studia il passo, o mio figlio![ˈstudja il ˈpasso ɔ ˈmi.o ˈfiʎʎo]
Usciam da queste tenèbre…[uʃˈʃam da ˈkweste teˈnɛbre]
Un senso ignoto[un ˈsɛnso iɲˈɲɔto]
nascer mi sento in petto[ˈnaʃʃer mi ˈsɛnto in ˈpɛtto]
pien di tristo presagio e di sospetto.[pjɛn di ˈtristo preˈzadʒo e di soˈspɛtto]

アリアのIPA

歌詞IPA
Come dal ciel precipita[ˈkome dal tʃɛl preˈtʃipita]
l’ombra più sempre oscura![ˈlombra pju ˈsɛmpre osˈkura]
In notte ugual trafissero[in ˈnɔtte uˈɡwal traˈfissero]
Duncano, il mio signor.[duŋˈkano il ˈmi.o siɲˈɲor]
Mille affannose immagini[ˈmille affanˈnose imˈmadʒini]
m’annunciano sventura,[manˈnuntʃano zvenˈtura]
e il mio pensiero ingombrano[e il ˈmi.o penˈsjɛro iŋˈɡombrano]
di larve e di terror.[di ˈlarve e di terˈror]

襲撃時の言葉のIPA

歌詞IPA
Ohimè! Fuggi, mio figlio!… O tradimento![oiˈmɛ ˈfuddʒi ˈmi.o ˈfiʎʎo ɔ tradiˈmento]

発音で特に意識したいのは、次の点です。

  • tenèbre:掲載台本は、日常語で一般的なtènebreとは異なる詩的な強勢を明示しています。ここではその指定に従っています。
  • ciel・precipita:c はどちらも [tʃ]。英語風の [s] や [k] にはしません。
  • ombra:強勢母音は閉じた [o]。notteの開いた [ɔ] と区別します。
  • figlio・signor:それぞれ [ʎʎ] と [ɲɲ]。日本語の「リ」「ニ」だけで置き換えると、イタリア語の輪郭が薄くなります。
  • più sempre:続けて発音すると、標準的には [pju sˈsɛmpre] のような語境界の重子音化が起こります。上の表では、各単語を確認しやすいよう簡略化しています。

IPAを読む際の一般的な考え方は、声楽家向けの発音書であるデイヴィッド・アダムズ著『A Handbook of Diction for Singers』第3版(Oxford University Press, 2022)を参考にしています。同書がこのアリアの表記を監修しているという意味ではありません。語の強勢・母音の確認には、トレッカーニの辞書も参照しました。

このアリア、どこを聴くと面白い?

1.恐怖だけでなく、父親の声を聴く

冒頭には「息子よ」という呼びかけがあり、最後にも「逃げろ、息子よ」という叫びがあります。

その間に置かれているのが、バンコー自身の不安です。大きな声で恐怖を表すだけでなく、息子を連れて先へ進もうとする声と、胸の内をのぞかせる声が、どう切り替わるか。ここに注目すると、歌手によって人物像が違って聞こえてきます。

以下は、台本を踏まえた鑑賞上の提案です。一つの歌い方を正解とするものではありません。

2.暗い場面に、豊かな旋律が与えられる意味

フェニーチェ劇場の公演資料に寄稿した音楽学者パオロ・ガッララーティは、バンコーの旋律の開かれた豊かさを、犠牲者の無実を示すものとして捉えています。

暗い場面だからといって、声まで終始おどろおどろしくするだけでは、この音楽の魅力は見えてきません。旋律の大きな呼吸の中に、彼の品格や人間らしさがある。その美しさを聴いた直後だからこそ、暗殺がいっそう残酷に感じられます。

ガッララーティが指摘する、直前の刺客たちの音楽との対照にも耳を向けてみてください。できればアリア単独でなく、前の場面から続けて聴くのがおすすめです。

3.「我が主君」で、誰を思い出すのか

Duncano, il mio signor——「ダンカン、我が主君」。

ここでバンコーは、ただ過去の事件を説明しているのでしょうか。それとも、亡くなった王への敬意や悲しみが声に浮かぶのでしょうか。

同じ歌詞でも、ダンカンの名前と「我が主君」をどう結ぶかによって、人物の記憶の深さが変わります。低音の迫力に加えて、こうした言葉の扱いを聴くと、バスの表現の幅が感じられると思います。

4.最後の「恐怖」が、次の場面につながっている

前半では闇と過去を語り、後半では無数の幻影が心を占めていきます。外を見ていた視線が、自分の内側へ向かっていくような歌詞です。

終わりの terror だけを切り離して聴くよりも、immagini → sventura → larve → terror と、不安の言葉が積み重なる流れを追ってみてください。

そして、その先にある叫びまで聴く。アリアの美しさと、劇の無慈悲な進行が、一つの場面として迫ってきます。

参考:Paolo Gallarati「Macbeth, capolavoro di frontiera」、『Macbeth』公演資料、Fondazione Teatro La Fenice di Venezia、2018年、pp.65–74(バンコーの場面への言及はp.69)。PDFを読む

死後のバンコーが、さらに強い存在になる

宴会の場面では、殺されたバンコーの姿がマクベスの前に現れます。他の人々と共有できない恐怖によって、王の威厳が崩れていきます。

ここで興味深いのは、生前には豊かな独白を与えられたバンコーが、亡霊としては歌でマクベスを責めないことです。台本上、亡霊は歌唱を持たない役として扱われています。

生きているときの声を奪っても、その存在は消せない。そう読むと、〈Come dal ciel precipita〉で聴いた人間らしい声が、後の沈黙をいっそう重くします。

バンコーの息子が逃れることも、単に次の事件へのつなぎではありません。マクベスが断ち切ろうとした未来は、まだ残っているのです。

バンコーを知ると、《マクベス》の聴こえ方が変わる

《マクベス》は、どうしても主人公夫妻の強烈な存在感に目が向きます。しかしバンコーを追うと、その暴力によって失われる人間の側から、物語を見ることができます。

予言を警戒する将軍。自分の未来にも心が動く一人の人間。そして、最後には息子を逃がそうとする父親。

〈Come dal ciel precipita〉は、短い時間の中に、その人物の重さが凝縮された場面です。

初めて聴く方は、まず「息子を連れた父親が、不吉な夜道を歩いている」と思い浮かべてみてください。そのうえで、深まる闇、ダンカンの記憶、迫る恐怖へと耳を傾けると、バスの声が描くドラマがぐっと身近になるはずです。

参考文献・資料

本文の成立史・歴史的背景は以下の資料に基づき、歌詞の日本語訳、IPA表、鑑賞上の提案は本記事で作成しています。個人著者が表示されない資料は、発行・公開責任を持つ機関名を記しました。

  1. David Lawton(校訂):Giuseppe Verdi, Macbeth, The Works of Giuseppe Verdi。Casa Ricordi/The University of Chicago Press。出版社による版・成立史の案内。本記事ではこの公開案内を参照し、校訂報告全文を参照したものではありません。
  2. Francesco Maria Piave/Andrea Maffei(台本)・Teatro alla Scala(公開):Macbeth, 1865年版台本。上記校訂版に基づく。公開PDF。原詞、人物、ト書きの確認に使用。
  3. Paolo Gallarati:「Macbeth, capolavoro di frontiera」。Fondazione Teatro La Fenice di Venezia発行、Macbeth 公演資料、2018年、pp.65–74。公開PDF。刺客の場面とバンコーの旋律の対照を参照。
  4. Barbara Mowat/Paul Werstine:「About Shakespeare’s Macbeth」。Folger Shakespeare Library。解説。原作の時代背景に使用。同図書館の第3幕第1場と第3幕第3場も参照。
  5. Royal Shakespeare Company:「Dates and sources」。公開解説。成立時期、ホリンシェッドとバンコーの描写を参照。
  6. The Royal Household:「Macbeth (r. 1040–1057)」。公式歴史紹介。歴史上の王と戯曲との相違を確認。
  7. The Metropolitan Opera:「Macbeth: Plot and Creation」。教育用資料。ヴェルディ、ピアーヴェ、マッフェイによる脚色過程を参照。
  8. Comitato Nazionale per le celebrazioni del centenario della scomparsa di Arrigo Boito:「Biografia」。公式伝記。ボーイトの作曲・台本・翻訳の仕事を確認。
  9. David Adams:A Handbook of Diction for Singers: Italian, German, French, 3rd edition。Oxford University Press, 2022。出版社ページ。公開プレビューのIPA説明を参照。
  10. Luigi Blasucci:「Studiare」、Enciclopedia Dantesca、1970年、Istituto della Enciclopedia Italiana。語義解説。同機関の辞書項目「tenebra」、「ombra」も参照。

資料確認日:2026年10月10日。

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