ハイドン《天地創造》とは?初めて聴く人に向けた聴きどころ解説
※この記事はアフィリエイト広告を使用しています。
どうも氷見です。
今回は、ハイドンのオラトリオ《天地創造》について書いてみます。
《天地創造》は、タイトルの通り、世界が創られていく様子を音楽で描いた大作です。混沌から光が生まれ、海や大地、太陽や月、動物、そして人間が現れていく。その過程が、ソリスト、合唱、オーケストラによって鮮やかに表現されます。
宗教的な題材を扱っていますが、重苦しい作品というより、自然や生命への喜びに満ちた作品だと思います。初めて聴く方でも、情景を思い浮かべながら楽しむことのできる作品です。
この記事では、《天地創造》の基本情報と聴きどころを、初めて聴く方にもわかりやすいようにまとめてみます。
ハイドン《天地創造》とはどんな作品か

《天地創造》は、ヨーゼフ・ハイドンが1796年から1798年にかけて作曲したオラトリオです。1798年4月30日にウィーンのシュヴァルツェンベルク宮殿で私的に初演され、その後、1799年にはより広く公開されました。題材は旧約聖書『創世記』を中心に、『詩篇』やジョン・ミルトン『失楽園』にも関わるテキストをもとにしています。台本にはゴットフリート・ヴァン・スヴィーテンが関わりました。
作品は全3部構成です。
第1部では、創造の第1日から第4日までが描かれます。
第2部では、第5日と第6日、つまり魚、鳥、動物、そして人間の創造へ向かっていきます。
第3部では、エデンの園にいるアダムとイヴの幸福な世界が描かれます。
主な独唱者は、大天使ガブリエル、ウリエル、ラファエルです。第3部ではアダムとイヴが登場します。ガブリエル、イヴをソプラノ、ウリエルをテノール、ラファエル、アダムをバスが担当します。
オラトリオというのは、簡単に言うと、舞台演技を伴わずに、独唱・合唱・オーケストラで物語や情景を描く大規模な声楽作品です。《天地創造》はその中でも、音楽で情景を想像しやすい作品だと思います。
聴きどころ①|“混沌”を描く冒頭

《天地創造》の冒頭は、「混沌の描写」と呼ばれる有名なオーケストラ部分です。
ここでは、まだ世界が形を持っていない状態が音楽で描かれます。不安定な和声、落ち着かない響き、どこへ進むのかわからない音楽。古典派の作品でありながら、かなり大胆な響きが使われています。
この冒頭では、断片的な主題、予想外の和声進行、衝撃的な不協和音などによって、まだ秩序を持たない世界が表現されています。
ここは、ただの序曲ではありません。
「世界がまだ存在していない」という状態そのものを、音で描こうとしている場面です。整った古典派の音楽というイメージだけで聴くと、かなり驚かされる部分だと思います。
聴きどころ②|“光あれ”の衝撃

《天地創造》で最も有名な瞬間のひとつが、「光あれ」の場面です。
混沌とした暗い音楽のあと、ラファエルのレチタティーヴォによって情景が語られ、神の言葉によって光が生まれます。その瞬間、合唱とオーケストラが輝かしいハ長調の和音で一気に開かれます。
この「光」の瞬間は、合唱とオーケストラが全力を解き放つ劇的な一撃と言えるでしょう。
また、この場面は、各日の終わりではない箇所で合唱が使われる唯一の例であり、それによってこの瞬間の宇宙的な力が強調されているとされています。
初めて《天地創造》のソリストを務めた公演では、最初は薄暗い照明から始まり、この「光あれ」の言葉の瞬間に照明がフルで点灯されました。
音楽だけでなく、視覚的にも「光」が生まれる瞬間が表現されていて、今でも強く印象に残っています。
初めて聴く方には、まずこの場面をぜひ楽しみにしてほしいです。
本当に、空間そのものが一瞬で明るくなるような音楽です。
聴きどころ③|自然や動物の描写

《天地創造》では、自然や動物の描写も大きな魅力です。
ハイドンは、テキストに出てくるものを音楽で非常に生き生きと描いています。波、川の流れ、日の出、月の光、鳥、魚、動物など、それぞれに音楽的な性格が与えられています。
このように、言葉の内容を音で描く技法は「ワード・ペインティング」と呼ばれます。《天地創造》では、このワード・ペインティングがとてもわかりやすく、初めて聴く人にも楽しみやすい部分です。
例えば、鷲、ひばり、鳩、ナイチンゲールなどの鳥の描写や、鯨の創造、動物たちの登場など、ハイドンは自然や生き物をとても生き生きと描いています。解説資料でも、波、川、日の出、月の光、鳥や鯨などが音楽的に描写される点が《天地創造》の魅力として挙げられています。
特に面白いのは、オーケストラが先に情景を描き、その後にソリストが「今、何が創造されたのか」を語るような場面です。
たとえば、嵐や雷、雨、雪の描写では、音楽が先にその情景を描き、聴き手に「これは何の場面だろう」と想像させるような作りになっています。その後に、バスのレチタティーヴォが言葉でその場面を示していく。
このバスのレチタティーヴォ部分は、歌い手として非常にやりがいがあります。
ただ説明するだけではなく、言葉を伴ってその世界観を体感しながら語る必要があるからです。
また、後半のバスの場面では、低音楽器の力強い響きにもハイドンの遊び心を感じます。コントラファゴットを含む低音のアクセントが、動物や大きな生き物の存在感をユーモラスに、そして迫力を持って描きます。
合唱の魅力|“世界を讃える声”

《天地創造》では、合唱が非常に重要な役割を持っています。
合唱は単なる背景ではなく、創造された世界を讃える大きな声として響きます。第1部・第2部では、創造の日々がレチタティーヴォ、アリア、合唱によって進み、それぞれの日が合唱で締めくくられる構造になっています。
《天地創造》の合唱には、ハイドンらしい明るさと祝祭感があります。力強いだけでなく、透明感や軽やかさも感じられるところが魅力です。
合唱ナンバーの前のレチタティーヴォでは、どのような声が響き渡ったのかが語られる場面があります。
その言葉の通りに合唱が響いた瞬間、聴いている側も物語の中に入っていくような感覚になります。
《天地創造》の合唱は、音量の迫力だけではありません。
世界が創られたことへの驚き、喜び、賛美が音楽になって広がっていく。
そこに、この作品ならではの明るさがあります。
バス歌手として感じる《天地創造》の魅力

バス歌手として《天地創造》に触れると、低声の役割の面白さを強く感じます。
この作品では、ラファエルやアダムなど、低声が語る場面に重要な役割があります。特にラファエルは、創造の過程を語るレチタティーヴォが多く、言葉をどのように届けるかがとても大切になります。
《天地創造》では、低声がただ重く支えるだけではありません。
物語を進め、情景を説明し、時には創造された生き物たちの姿を音楽的に描いていきます。
ハイドンの低声は、ベートーヴェンのような重厚さが必要になる場面ももちろんありますが、それだけではありません。明るさ、語りの自然さ、音楽を前へ進める推進力も同時に求められているように感じます。
音域のレンジも広く、低い音から高い音までかなり幅広く使われます。重々しい響きだけでなく、語り、描写、軽やかさ、華やかさまで必要になるところが、この作品の面白さです。
嵐の場面や鯨の場面では、典型的で重厚なバスの表現が求められます。
一方で、嵐の後に小川が流れる様子を語るところでは、音楽の質感がまったく変わります。
さらにアダムに切り替わると、人間の誕生の喜びを持って、より華やかに歌い上げる世界になります。
低声の役割がこれほど多面的に描かれているところに、バス歌手としての大きな魅力を感じます。
初めて聴く人へ|《天地創造》の楽しみ方

《天地創造》は、初めてクラシックの大曲を聴く人にも比較的入りやすい作品だと思います。
おすすめの聴き方は、まず物語を追うことです。
混沌から光が生まれ、自然が整い、動物が現れ、人間が誕生する。
この大きな流れをイメージしながら聴くだけでも楽しめます。
次に、自然描写を探してみるのもおすすめです。
「これは鳥かな」
「これは水かな」
「今、動物が現れたのかな」
そんなふうに想像しながら聴くと、かなり親しみやすくなります。
そして、合唱の迫力を体で感じること。
《天地創造》の合唱は、世界を讃える大きな声のように響きます。宗教曲だから難しい、と構える必要はありません。むしろ、“世界が生まれていく物語”として聴くと、作品に入りやすいと思います。
まとめ《天地創造》は“希望”を感じる音楽

《天地創造》は、混沌から光が生まれ、自然や生命が満ちていく様子を音楽で描いた作品です。
壮大でありながら、どこか親しみやすい。
宗教曲でありながら、自然や生命への喜びに満ちている。
そこが、この作品の大きな魅力だと思います。
特に「光あれ」の場面、自然や動物の描写、そして合唱の祝祭的な響きは、初めて聴く方にも強く印象に残るはずです。
音楽で世界が生まれる瞬間を味わえる作品。
《天地創造》は、そんな特別な魅力を持ったオラトリオだと思います。
ぜひコンサートホールで、その響きを堪能していただけますと幸いです。
これからこちらの天地創造公演に携わります。
ぜひ足をお運びください!
宗教曲・オラトリオ作品のバスソリスト出演、声楽レッスン、合唱指導のご相談を承っております。第九、ハイドン《天地創造》、モーツァルト《レクイエム》、ベートーヴェン《ミサソレムニス》など、演奏・指導のご相談は以下よりお問い合わせください。




