ヘンデル《メサイア》The trumpet shall soundとは?バスソロとトランペットが告げる復活の希望

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はじめに《メサイア》の中で響くバスソロとトランペット

どうも氷見です。

今回は、ヘンデル《メサイア》の中から、バスソロの名曲〈The trumpet shall sound〉を取り上げます。

《メサイア》といえば、多くの方がまず思い浮かべるのは〈ハレルヤ・コーラス〉かもしれません。

日本でも年末の演奏会で取り上げられることが多く、クリスマスのイメージを持っている方も多いと思います。

しかし、《メサイア》はキリストの誕生だけを描いた作品ではありません。

預言、誕生、受難、復活、そして永遠の命への希望までを大きく描くオラトリオです。

その中で〈The trumpet shall sound〉は、第3部に置かれています。

ここで歌われるのは、最後のラッパが鳴り、死者が朽ちないものとしてよみがえる、という復活の希望です。

バスソロとトランペットが対話するように進むこの曲は、モーツァルト《レクイエム》の〈Tuba mirum〉とも比較したくなる重要な場面です。

この記事では、〈The trumpet shall sound〉の歌詞の意味、曲の中での位置づけ、トランペットとバスソロの関係、そして初めて聴く方に注目してほしいポイントをまとめます。

ヘンデル《メサイア》とはどんな作品か

ヘンデル《メサイア》は、英語によるオラトリオです。

オラトリオとは、オペラのように独唱、合唱、オーケストラを用いながら、基本的には舞台装置や演技を伴わずに宗教的な内容を描く作品です。

《メサイア》の台本は、チャールズ・ジェネンズが聖書の言葉をもとに編んだものです。

物語の登場人物が会話を進めるというより、旧約聖書と新約聖書の言葉を組み合わせながら、キリストの到来、受難、復活、救いへの希望を描いていきます。

作品は大きく3部に分かれています。

第1部では、救い主の到来の預言と誕生が中心になります。

第2部では、受難、復活、福音の広がり、そして有名な〈ハレルヤ・コーラス〉へ進みます。

第3部では、復活への希望、死への勝利、そして最後の賛美が歌われます。

〈The trumpet shall sound〉は、この第3部に登場します。

〈The trumpet shall sound〉はどの場面で歌われるのか

〈The trumpet shall sound〉の前には、合唱〈Since by man came death〉が置かれています。

ここでは、

人によって死が来たように、人によって死者の復活も来る。

という内容が歌われます。

そのあと、バスのレチタティーヴォ〈Behold, I tell you a mystery〉が続きます。

ここでは、

私たちは皆眠るのではない。
しかし、皆変えられる。
最後のラッパが鳴る時、一瞬のうちに変えられる。

という内容が語られます。

そして、その流れを受けて、バスのアリア〈The trumpet shall sound〉が始まります。

つまりこの曲は、単独で華やかなバスの見せ場として置かれているだけではありません。

第3部全体が描く「復活への希望」の中で、最後のラッパと死者の復活を告げる重要な場面なのです。

歌詞の意味 ラッパが鳴り、死者はよみがえる

〈The trumpet shall sound〉の中心となる内容は、とても明確です。

大まかに訳すと、

ラッパが鳴り、死者は朽ちないものとしてよみがえり、私たちは変えられる。

という意味になります。

ここでいう「trumpet」は、ただの華やかな楽器としてのトランペットではありません。

最後の時を告げるラッパです。

モーツァルト《レクイエム》の〈Tuba mirum〉でも、最後の審判を告げるラッパが歌われます。

しかし、《メサイア》の〈The trumpet shall sound〉では、恐怖よりも、復活と変容への希望が前面に出ています。

死は終わりではない。

朽ちるものは朽ちないものへ、死すべきものは不死のものへ変えられる。

この希望を、ヘンデルはバスソロとトランペットによって力強く描いています。

トランペットとバスソロの関係

この曲の最大の特徴は、トランペットのオブリガートです。

オブリガートとは、歌に添えられる重要な独奏楽器のパートのことです。

〈The trumpet shall sound〉では、トランペットが単なる伴奏ではなく、バスソロと対等な存在感を持っています。

トランペットは「最後のラッパ」を象徴する楽器であり、バスソロはその意味を言葉として伝える声です。

トランペットが鳴る。

それに応えるように、バスが復活の言葉を歌う。

この関係が非常に印象的です。

バスの声だけではなく、トランペットの輝きと一体になって、復活の確信が音楽として立ち上がります。

〈Tuba mirum〉との違い

モーツァルト《レクイエム》の〈Tuba mirum〉と、ヘンデル《メサイア》の〈The trumpet shall sound〉は、どちらも「ラッパ」と「バスソロ」が関わる重要な曲です。

どちらも、終末や死者の復活と関係しています。

しかし、音楽の性格はかなり違います。

〈Tuba mirum〉では、トロンボーンが最後の審判を告げ、バスソロが静かに入ってきます。

そこには、裁き、恐れ、死者が呼び起こされる厳粛な空気があります。

一方、〈The trumpet shall sound〉では、トランペットの輝かしい響きとともに、復活の希望が堂々と歌われます。

同じ「最後のラッパ」でも、モーツァルトでは審判の重さが、ヘンデルでは復活の勝利と希望が強く感じられます。

この違いを意識して聴くと、2つの作品の世界観の違いがよく見えてきます。

バス歌手として見る〈The trumpet shall sound〉

〈The trumpet shall sound〉は、バス歌手にとって非常に重要なレパートリーの一つです。

派手な技巧だけで聴かせる曲というより、長いフレーズを堂々と保ち、英語の言葉を明瞭にしながら、トランペットと一体になって音楽を進める必要があります。

この曲では、低声の深さだけでなく、明るさと推進力も必要です。

復活の希望を歌う音楽なので、重々しくなりすぎると曲の性格が変わってしまいます。

一方で、軽く歌いすぎると、死者の復活を告げる言葉の重みが失われます。

バスに求められるのは、

  • 堂々とした響き
  • 英語の言葉の明瞭さ
  • トランペットとの呼吸
  • 長いフレーズを支える安定感
  • 重さと輝きのバランス

だと思います。

低声でありながら、音楽は上へ向かって開いていく。

そこが、この曲の大きな魅力です。

〈Why do the nations〉との違い

《メサイア》には、もう一つ有名なバスのアリアとして〈Why do the nations〉があります。

こちらは第2部に置かれ、詩篇の言葉をもとに、諸国の民がなぜ神とその油注がれた者に逆らうのか、という内容を歌います。

音楽的にも、細かい動きや激しい表現が多く、怒りや反抗する世の動きを描くような性格があります。

それに対して〈The trumpet shall sound〉は、より堂々とした音楽です。

激しく動き回るというより、復活の確信を大きく歌い上げる曲です。

同じバスアリアでも、

〈Why do the nations〉は激しい動き。
〈The trumpet shall sound〉は復活の宣言。

という違いがあります。

この2曲を比べると、《メサイア》の中でバスが担う表現の幅も見えてきます。

初めて聴く人への聴きどころ

初めて〈The trumpet shall sound〉を聴く方は、まずトランペットの入り方に注目してみてください。

トランペットは単なる華やかな飾りではなく、歌詞そのものと深く結びついています。

次に、バスソロがそのトランペットの響きをどのように受け取って歌い始めるかを聴いてみると面白いと思います。

また、この曲は長いアリアなので、途中で同じ言葉が繰り返されます。

しかし、その繰り返しは単なる反復ではありません。

「ラッパが鳴る」
「死者はよみがえる」
「私たちは変えられる」

という言葉が何度も響くことで、復活の確信が少しずつ強くなっていきます。

トランペットの輝き、バスの言葉、オーケストラの推進力。

この3つが合わさったとき、〈The trumpet shall sound〉は非常に力強い音楽になります。

《メサイア》はクリスマスだけの作品ではない

日本では《メサイア》が年末やクリスマスの時期に演奏されることが多いため、「クリスマスの曲」という印象を持つ方も多いかもしれません。

もちろん、第1部にはキリストの誕生に関わる音楽があります。

しかし、《メサイア》全体を見ると、誕生だけではなく、受難、復活、救い、永遠の命への希望までを描いています。

〈The trumpet shall sound〉は、その中でも復活と変容を告げる第3部の重要な曲です。

《メサイア》を聴くときは、〈ハレルヤ・コーラス〉だけでなく、第3部の音楽にも注目すると、作品全体の奥行きがより伝わってくると思います。

まとめ〈The trumpet shall sound〉は復活の希望を告げる低声の音楽

ヘンデル《メサイア》の〈The trumpet shall sound〉は、バスソロとトランペットによって、復活の希望を告げる重要な場面です。

ラッパが鳴り、死者が朽ちないものとしてよみがえる。

この聖書の言葉を、ヘンデルは輝かしいトランペットと堂々としたバスソロによって描きました。

モーツァルト《レクイエム》の〈Tuba mirum〉が、最後の審判の厳粛さを感じさせる音楽だとすれば、ヘンデル《メサイア》の〈The trumpet shall sound〉は、復活の勝利と希望を告げる音楽だと思います。

《メサイア》を聴く際には、ぜひ第3部にも注目してみてください。

〈The trumpet shall sound〉には、低い声と金管楽器が一体となって、死を越えた希望を歌う特別な瞬間があります。


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