【実機レビュー】ATH-M70xはフラットで作業しやすい|音質・装着感・ミックス/録音適性を解説
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どうも、氷見健一郎です。
今回は、オーディオテクニカの密閉型モニターヘッドホン「ATH-M70x」を、実際に長く使って感じた音質、装着感、ミックスや歌の録音への適性、付属品、持ち運びやすさまで詳しく紹介します。
ATH-M70xの音をひと言で表すなら、「飾り付けの少ない、仕事のための音」です。
低音を迫力たっぷりに聴かせたり、高音のきらびやかさで細部を強調したりするタイプではありません。特定の帯域だけが前へ出にくく、音源に含まれるバランスを比較的そのまま確認できます。
そのため、音楽を華やかに楽しむリスニング用ヘッドホンというより、録音、編集、ミックスの判断を支えるモニターとして使いやすいと感じました。
先に結論をまとめます。
- 過度な味付けが少なく、低音も強調されない
- ミックスや録音後の確認に使いやすい
- 耳を覆う密閉型で、長時間でも比較的無理なく装着できた
- 音漏れが気になりにくく、歌のレコーディングにも使いやすかった
- イヤーパッドが丈夫で、長く使えた
- 1.2mと3.0mのストレートコード、1.2mのカールコードを交換できる
- ハードケースとポーチが付属し、保管時の安心感がある
- イヤーカップは横向きに回るが、ヘッドバンドを折り畳んで小さくすることはできない
- バランスは良い一方、微細な音が鮮烈に浮かぶような解像感ではない
- 楽しく聴かせる味付けを求める人には、やや淡白に感じられる可能性がある
音を華やかに演出するより、録音やミックスの状態を落ち着いて確認することに向いたヘッドホンです。
ATH-M70xとは

ATH-M70xは、オーディオテクニカが2015年2月20日に発売した、プロフェッショナル向けの密閉型モニターヘッドホンです。
公式サイトでは、Mシリーズのフラッグシップモデルとして、レコーディングやミキシングを想定した広帯域でフラットな特性、45mmのCCAWボイスコイルドライバー、楕円形のイヤーカップなどが紹介されています。
| 項目 | ATH-M70xの仕様 |
|---|---|
| 型式 | 密閉ダイナミック型 |
| ドライバー | 45mm、CCAWボイスコイル |
| 再生周波数帯域 | 5~40,000Hz |
| 出力音圧レベル | 97dB/mW |
| 最大入力 | 2,000mW |
| インピーダンス | 35Ω |
| 質量 | 280g(コードを除く) |
| コード | 1.2mカール、3.0mストレート、1.2mストレート |
| 接続 | 3.5mmステレオミニ/6.3mm標準変換プラグ |
| 付属品 | ハードケース、ポーチ、3本の着脱コード |
なお、2026年8月9日現在、オーディオテクニカの国内公式製品ページには「生産完了」と表示されています。
新品の流通在庫が見つかる場合はありますが、価格や付属品、販売元を確認してから選んだ方がよいでしょう。中古品では、イヤーパッドの状態、左右の音量差、着脱端子、3本のコードとケースの有無も確認したいところです。
過度な味付けがなく、低音も強調されない

ATH-M70xを使って最も好印象だったのは、音のバランスです。
低域を必要以上に太くせず、ボーカルや楽器を派手に前へ押し出す感じもありません。ベースやバスドラムの量感で楽しませるというより、低音が音源の中にどれくらい含まれているかを冷静に見やすい鳴り方です。
声を確認するときも、厚みを足して立派に聴かせる方向ではありません。中低域が膨らみすぎないため、声のこもり、伴奏との距離、リバーブの量などを判断しやすく感じました。
「フラット」という言葉は、すべての人にまったく同じ周波数特性で聞こえるという意味ではありません。密閉型ヘッドホンは、耳の形、イヤーパッドの密着、眼鏡などによって、とくに低音の聞こえ方が変わります。
RTINGSのSam Vafaei氏とJean-Christophe Lamontagne氏による測定レビューでも、ATH-M70xは楽器とボーカルを捉えやすい一方、低音は少なめで、装着する人による変化も大きいと報告されています。
僕自身の感覚では、「完全に無色透明」と断定するより、「過度な味付けを感じにくく、低音を盛らない」と表現するのが最も近いと思います。
バランスは良いが、解像感で圧倒するタイプではない
オーディオテクニカはATH-M70xを「超高解像度再生」と案内しています。5~40,000Hzという再生周波数帯域も、スペック上は非常に広いものです。
ただし、実際に使った印象では、微細な残響や録音の奥にあるノイズまで強烈に浮かび上がらせるようなヘッドホンではありませんでした。
ここは、「音のバランスが良いこと」と「細部が鮮烈に見えること」を分けて考える必要があります。
ATH-M70xは、特定の帯域を強調して細部が多く聞こえるように演出するより、全体を落ち着いて並べてくれます。そのため、一聴した瞬間の情報量に驚くタイプではなくても、音量、定位、音色の偏りを判断する道具としては使いやすいのです。
聴き慣れるほど、派手さのなさが長所として分かってくるヘッドホンだと思います。
ミックスには使いやすい。ただし、スピーカーとの確認は必要
ミックス作業では、低音が膨らまず、ボーカルや楽器のバランスを冷静に確認できる点が役立ちました。
とくに確認しやすかったのは、次のような部分です。
- ボーカルが伴奏に埋もれていないか
- 中低域が重なって音が濁っていないか
- リバーブを加えすぎていないか
- 左右の配置や音量差に違和感がないか
- 編集点、ブレス、ノイズが不自然に残っていないか
一方、MusicRadarのRobbie Stamp氏は、ATH-M70xでは中域の問題を見つけやすい反面、低域の判断にはメインモニターとの照合が必要だと評価しています。
これは僕の使用感とも矛盾しません。ATH-M70xはミックスに使いやすいものの、どのヘッドホンにも固有の聞こえ方があります。最終的にはスピーカーや別のヘッドホン、市販音源と比較した方が安全です。
ATH-M70xだけですべてを決めるというより、ミックスの中心を組み立て、別の環境で答え合わせをする使い方が適しています。
耳を覆う密閉型で、歌のレコーディングにも使いやすい

ATH-M70xは、イヤーパッドが耳の上へ直接載るオンイヤー型ではなく、耳全体を囲むオーバーイヤー型です。
僕が歌のレコーディングで使った範囲では、ヘッドホンからの音漏れは問題になりにくく、マイクへ返し音が入り込むことを過度に心配せずに使えました。
耳全体がパッドの内側へ収まりやすいため、長時間の収録でも耳の一部分だけが強く圧迫されません。密閉型としては装着感が自然で、録音から編集まで続けて使いやすいと感じます。
ただし、外から入る騒音をどこまで遮るかという「遮音性」と、ヘッドホンの音が外へ出る「音漏れ」は同じではありません。RTINGSのレビューでは外部騒音の遮断は弱めで、高音量では多少音が漏れる可能性も指摘されています。
コンデンサーマイクで静かな歌を録る場合は、実際に使用する返し音量で短くテスト録音し、クリックや伴奏が漏れていないか確認するのが確実です。
耳全体を覆う密閉型のため、ミックスだけでなく歌唱時のモニターにも使いやすく感じました。
イヤーパッドが丈夫で、長時間でも使いやすかった
イヤーパッドの作りには、かなり良い印象があります。
柔らかさがありながら形が崩れにくく、長く使用しても比較的良い状態を保ちました。耳を包む面積が広いため、装着圧が一点へ集中しにくいことも、長時間使用のしやすさにつながっています。
本体はコードを除いて280gです。超軽量というほどではありませんが、重量と側圧のバランスがよく、作業中に重さが大きな負担になることはありませんでした。
ハウジング、アーム、スライダーにはアルミニウムが使われ、手に取ったときにも作りのしっかりした安心感があります。
公式の部品ページでは、イヤーパッド「HP-M70x」、ヘッドパッド、各コード、ケース、ポーチなどが注文可能部品として掲載されています。生産完了後も消耗品を交換しながら使えることは、長期使用を考えるうえで重要です。
3本のコードとハードケースは実用的
ATH-M70xには、用途の異なる3本のコードが付属します。
- 1.2mストレートコード:机上のオーディオインターフェースやノートパソコン向け
- 3.0mストレートコード:スタジオ内で少し離れて使う場合に便利
- 1.2mカールコード:必要に応じて伸び、余った部分が床へ広がりにくい
コードは片出しの着脱式で、バヨネット式のロック機構により、使用中に簡単には抜けない構造です。
作業環境に合わせてストレートとカールを交換できるのは便利でした。断線した場合にコードだけ交換できることも安心材料です。
本体用のハードケースとコード用ポーチが付属するため、保管中にイヤーカップやスライダーを傷めにくく、周辺機材と一緒に運ぶときにも安心感があります。
短いストレート、長いストレート、カールコードを作業環境に合わせて使い分けられます。
イヤーカップは横へ倒せるが、折り畳みはできない
持ち運びでは、注意したい点があります。
ATH-M70xのイヤーカップは約90度回転し、平らな状態にできます。しかし、ヘッドバンドの途中を折り曲げて小さく収納する構造ではありません。
厚みは抑えられても、ヘッドバンドの大きさはそのままです。ハードケースへ安全に収めることはできますが、バッグの隙間へ小さく押し込めるような携帯性はありません。
自宅やスタジオへ据え置いて使うことが中心なら大きな問題ではありません。一方、荷物をできるだけ小さくしたい遠征や移動用途では、ケースを含めた占有面積を考えておいた方がよいでしょう。
イヤーカップは平らにできますが、ヘッドバンドを折り畳む構造ではありません。
リスニング用には向いていないのか

もちろん、ATH-M70xで普通に音楽を聴くことはできます。
クラシック音楽では、低弦を過度に膨らませず、声とオーケストラの位置関係を落ち着いて聴けます。録音ごとの音色やバランスの違いを観察するような聴き方には適しています。
ただし、音楽へ迫力、艶、広がり、強い低音を求める場合には、少し淡白に感じるかもしれません。
ATH-M70xは、何も足さないことに価値があるヘッドホンです。仕事を離れて気持ちよく音楽へ浸りたいときには、もう少し音色に個性のあるヘッドホンを選びたくなる人もいるでしょう。
「リスニングには使えない」のではなく、「音楽を積極的に演出して楽しませる方向ではない」という整理が適切だと思います。
ATH-M70xをおすすめしたい人
ATH-M70xは、次のような人に向いています。
- 低音を盛らない密閉型モニターヘッドホンを探している
- 宅録、編集、ミックスを一台で幅広く行いたい
- 歌や楽器の収録中にも使いたい
- 耳全体を覆う装着感を重視したい
- 短いコード、長いコード、カールコードを使い分けたい
- イヤーパッドやコードを交換しながら長く使いたい
- ハードケース付きのしっかりした製品がほしい
反対に、次の条件を重視する人は、別のモデルとも比較した方がよいでしょう。
- 小さく折り畳んで持ち歩きたい
- 低音の迫力を楽しみたい
- 一聴して細部が鮮烈に飛び込んでくる音がほしい
- リスニング時の華やかさや開放的な音場を最優先したい
- 生産中の現行モデルを新品で安心して購入したい
まとめ――飾らない音だから、仕事で信頼できる
ATH-M70xは、音楽を派手に聴かせるヘッドホンではありません。
低音を強調せず、過度な味付けも加えない。耳をすっぽり覆う装着感、交換できる3本のコード、丈夫なイヤーパッド、ハードケースなど、制作現場で必要になる実用性を丁寧に備えています。
解像度の高さだけで圧倒するタイプではなく、折り畳んで小さく持ち歩くこともできません。しかし、録音、編集、ミックスを落ち着いて進めるための道具としては、非常に使いやすいヘッドホンでした。
「聴いて楽しい音」よりも、「判断を誤りにくい音」を求める人に向いた一台です。
すでに国内では生産完了となっているため、購入する場合は在庫、価格、販売元、付属品の状態を確認してください。
参考資料
- 株式会社オーディオテクニカ「ATH-M70x 製品ページ」(2026年8月9日閲覧)
- 株式会社オーディオテクニカ「ATH-M70x 取扱説明書」(2026年8月9日閲覧)
- 株式会社オーディオテクニカ「ATH-M70xの部品/付属品」(2026年8月9日閲覧)
- Robbie Stamp「Audio-Technica ATH-M70x review」MusicRadar、2015年12月7日。
- Sam Vafaei、Jean-Christophe Lamontagne「Audio-Technica ATH-M70x Headphones Review」RTINGS.com、2016年9月22日。テストベンチ更新:2019年11月21日。
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