24/05/06 ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024 最終日に、《声楽アンサンブル》、《東京ユヴェントス・フィルハーモニー》、《月に憑かれたピエロ》の公演を鑑賞しました。

氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。

前回の”ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024”の記事に引き続き、今回もこちらのクラシック音楽祭の記事を書きたいと思います。

この記事では音楽祭最終日、今回は国際フォーラム以外の会場でのエリアコンサートにも出向き、有料コンサートの半券で楽しめるコンサート、そして、有料コンサートのシェーンベルク《月に憑かれたピエロ》を鑑賞してきたので、その様子をお届けします。

音楽祭の概要や雰囲気などは、前回の記事を合わせてご覧いただけますと幸いです。

24/05/03 ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024『ORIGINES(オリジン) ー すべてはここからはじまった』初日を楽しんできました。

氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。 ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024『ORIGINES(オリジン) ー すべてはここからはじまった』に行ってきました。そ…

最初にご紹介する演奏会はこちらです↓

ラ・フォル・ジュルネ〈声楽アンサンブル〉

日時 5月5日 15時開演

会場 ルミネ有楽町/阪急メンズ東京(有楽町マリオン センターモール)

出演

首藤玲奈(S)

横瀬まりの(A)

澤原行正(T)

山本悠尋(Br)

平山麻美(p)

演目

1. J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ

2. アルカデルト:アウェ・マリア

3. メンデルスゾーン:オラトリオ「エリヤ」より「汝の重荷を主にゆだねよ」

4.バッハ:ロ短調ミサより「我ら主を誉め」

5. モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」よりフィガロのアリア
「もし踊りをなさりたければ」

6. ヴェルディ:
歌劇「リゴレット」よりマントヴァ公爵のアリア
「風の中の羽根のように」

7.ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム

8.(アンコール)オラトリオ《メサイア》よりハレルヤコーラス

会場に到着

こちらの演奏会の会場は、国際フォーラムではなく、有楽町マリオン センターモールということで、有楽町駅より国際フォーラムとは反対側の出口から向かいます。

有楽町駅からヤマハ銀座店に向かったことのある方にはお馴染みの動線ではないでしょうか。映画館とかもありますよね。今回はこちらの通りの真ん中にステージが設営されていました。

演奏会開演♪

演奏者が入場すると、たくさん集まったお客さんのあたたかな拍手で迎えられました。

最初に演奏したのがバッハのカンタータ147番のコラールという、クラシックファンでなくても一度は聴いたことのある有名曲から始まります。

会場の特性上、通行する人の足音や、道路の騒音などあり、細かいニュアンスを聴くには不向きな会場だったのですが、その美しいアンサンブルに足を止めて耳を傾ける方も多かったように思います。

特筆すべきは《エリア》のアンサンブルの演奏がされた時で、今まで騒がしかった空間がその演奏が始まると一気に静かになったことです。有楽町の雑踏を忘れ、おしゃれな空間で良い音楽を無料で楽しめるなんて、なんと贅沢なことだろうか。

アンサンブルの後は独唱セクションへ。今年のラフォルジュルネの副題(オリジン、すべてはここからはじまった)になぞらえて、自分の声楽家人生の始まりや、きっかけになった楽曲を歌うということでの選曲だったそうです。各々の思い入れのある楽曲揃いで、とても聴きごたえがありました。

山本さんとは大学同期の仲なのですが、彼の入学時に歌ったフィガロのアリアをそういう意味で聴くと、当時の懐かしさ、そして現在磨かれた彼の歌の素晴らしさの両方を感受することができ、個人的にも嬉しい選曲でした。

澤原さんのリゴレットのアリアでは、正面以外のお客さんにも歌声を楽しんでいただけるように、歌う向きを変えながら歌う工夫もあり、とても盛り上がっていました。

最後はハレルヤコーラスで締めくくり。大満足の30分プログラムでした。

会場を移動します。

続いてはメイン会場の東京国際フォーラムへ移動し、ホールEキオスクステージに向かいました。

続いて楽しんだコンサートはこちらです。

東京ユヴェントス・フィルハーモニー公演

日時 5月5日 開演16時

会場 ホールEキオスクステージ

指揮 坂入 健司郎

演奏 東京ユヴェントス・フィルハーモニー

演目 モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551《ジュピター》より 第4楽章

会場につくと

直前のリハーサルの様子をみることができました。指揮者の坂入 健司郎さんが、客席の方まで走って行き、サウンドチェックをされていました。そのなかでお客さんに話しかけられていて、坂入さんの人気の高さがうかがえます。

素早く戻るとオーケストラと打ち合わせ、その後マイクチェックと大忙しでした。

東京ユヴェントス・フィルハーモニー

リュリ、ラモーの作品から、ブルックナーやマーラー、ショスタコーヴィチといった大編成のオーケストラ作品まで取り組むオーケストラ。

東京ユヴェントス・フィルハーモニー公式サイトをチェックすると、”2018年には創立10周年を記念し、コンサートミストレスに青木尚佳氏を迎えてマーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」を演奏。その模様を収録したCDは、海外のレビューサイト「OPERA TODAY」においても絶賛された”と記載がありました。その演奏会のソプラノソリストは中江 早希が務めています。


演奏を聴いて

演奏前に音楽監督でもある坂入健司郎さんより挨拶があり、オーケストラのことを紹介するときの様子がこのオーケストラへの愛に溢れており、とても微笑ましかったです。そしてトークも面白かった!

今回演奏した、モーツァルトの交響曲第41番の四楽章の説明も、解説と聴きどころを実演を踏まえてレクチャーしてくださいました。オリジンという今回のテーマに沿って、初演されたときには立って演奏していたことから、立奏での演奏となりました。初演されたときの様子はこういうふうに見えていたんだなと思いながら楽しんでくださいというメッセージのあとに演奏が始まります。

とても大きな会場で、PAも入るような会場でしたが、会場後方で聴いていても、聴きごたえのある演奏を楽しむことができました。坂入さんの指揮は、《月に憑かれたピエロ》しか生で見たことがなかったのですが、オーケストラを振る様がとても情熱的で、フーガの流れを振り分ける様子がとてもかっこよかったです。

演奏会のあと、ラジオ収録、サイン会ありますと最後におっしゃっていたので、

公開ラジオ収録行ってきましたw

OTTAVAというインターネットラジオが同じ階のおとなりのブースで公開収録をしていました。パーソナリティは麻布OB+合唱団でもおなじみ、本田 聖嗣さんです。素敵なピアノ演奏をされているところしかいままで存じ上げなかったのですが、トークも素晴らしい♪フランス語も堪能で、パリ・エコールノルマル校長のミュリエルさんへの質問もご自身でされていました。

こちらの様子は5月6日の14時より4時間番組で放送されます。

そして夜になった

時は流れまして、会場はすっかり夜。待ちに待った月に憑かれたピエロを聴きに会場へ向かいます。

公演詳細はこちら↓

(公演番号336)シェーンベルク:月に憑かれたピエロ op.21

日時  5月5日 (日・祝) 19:30 〜 20:15

会場 東京国際フォーラム ホールD7:カンタービレ 

曲目

ドビュッシー:ベルガマスク組曲から 月の光

シェーンベルク:月に憑かれたピエロ op.21

出演

北村朋幹 (ピアノ)

毛利文香 (ヴァイオリン)

横坂源 (チェロ)

岩佐和弘 (フルート)

山根孝司 (クラリネット)

中江早希 (シュプレヒシュティンメ)

歌と語りの狭間で:前衛音楽の開祖シェーンベルクの表現主義時代の衝撃作を、ぜひ実演で!

会場に到着

今回の会場は、東京国際フォーラム ホールD7:カンタービレという会場で、前回の”G409:グラツィオーソ”よりも少し大きな221席の会場です。

会場へはエレベーターに上がって向かうのですが、エレベーターのりばへ行くと、会場に向かう方たちで行列が。どこか、ピエロという演目ということもあり、ディズニーのアトラクションに乗りに行くような気分にwこういう雰囲気も大事ですよね♪

チケットもぎりのブースもこんな感じです。会場に入る前からワクワクしている自分がいました。

会場内に入るとこのようになっていました。上手側の照明が三本線になっていますね。元からこうなのか、意図的な演出でこうなっているのか、たまらない演出です。少し作品について触れますね↓

アーノルド・シェーンベルク

実は“面白い”シェーンベルク~怒っているときに最高の音楽を書く ...

アルノルト・シェーンベルク(1874年9月13日 - 1951年7月13日)は、無調、セリアリズムや12音列を含む音楽作曲の新しい手法を生み出したオーストリア系アメリカ人の作曲家。20世紀で最も影響力のある教育者の一人でもあり、その中でも特筆すべき教え子にはアルバン・ベルクやアントン・ヴェーベルンがいます。

※セリアリズム 特に半音階の12音を使用して、和声と旋律の基礎を生成し、特定の方法でのみ変更される音列が固定された作曲技法。

※12音技法 音楽の作品において、半音階の12音が特定の順序で繰り返さないように配列され、12音が均等に演奏されるように作る作曲技法。

月に憑かれたピエロ

Pierrot Lunaire – Pierrot Narcisse – Editoria & Spettacolo

アーノルド・シェーンベルクによるメロドラマ『月に憑かれたピエロ』は、シェーンベルクの最も称賛され、頻繁に演奏される作品の1つです。

この作品は、朗読者(楽譜上では声種は指定されていませんが、ソプラノ歌手が歌唱することが多い)が、シュプレヒシュティンメを用いて小規模な器楽アンサンブルの伴奏で詩を読み上げます。音楽は無調ですが、シェーンベルクの12音技法は使用されていません。

1884年に出版された、アルベール・ジローの詩集『ピエロ・リュネール』から選ばれた21の詩を、オットー・エーリヒ・ハルトレーベンによってドイツ語に翻訳されたものに基づいています。

作曲の経緯

この作品は、女優であるアルベルティーネ・ツェーメからの委託によって生まれました。彼女はベルギーの作家アルベール・ジローの一連の詩を、声楽とピアノで演奏するための作品を依頼しました。

ツェーメは以前、翻訳された詩に基づく作曲家オットー・フリースランダーによる『メロドラマ』を演奏したことがありましたが、シェーンベルクの弟子であり、初演のピアニストでもあるエドゥアルト・シュトイアーマンによると、「音楽が十分に力強くなく、誰かが彼女にシェーンベルクに依頼したらと助言した」そうです

シェーンベルクは1912年3月12日に作曲を開始し、1912年7月9日に《月に憑かれたピエロ》を完成させました。

彼は、当初ピアノ伴奏でと依頼を受けたのですが、のちにフルート(ピッコロを兼ねる)、A管クラリネット(バスクラリネットとB♭管クラリネットを兼ねる)、ヴァイオリン(ヴィオラを兼ねる)、チェロ、ピアノからなるアンサンブルに仕上げました。

40回のリハーサルの後(リハーサルの回数については諸説あるらしい)、シェーンベルクとツェーメ(コロンビーヌの衣装を本番では着用したそうです)は1912年10月16日にベルリンのコラリオン・ザールで初演を行いました。

楽曲構成

《月に憑かれたピエロ》は、7つの詩からなる3つのグループで構成されています。

第一部では、ピエロは愛、性、宗教について歌います。第二部では、暴力、犯罪、冒涜について歌い、第三部ではベルガモへの帰還と、彼を苦しめる過去について歌います。

シェーンベルクは数秘術に魅了されており、作品全体を通じて7音のモチーフを多く利用しています。また、アンサンブル(指揮者を含む)は7人で構成されています。

この作品は彼の作品番号21であり、21の詩を含んでおり、1912年3月12日に作曲を開始したというところまでこだわられています。

作品の中で、その他重要な数字は3と13です。各詩は13行からなり(4行の詩が2つ続いた後に5行の詩が続く)、各詩の最初の行は3回、7行目と13行目として繰り返されます。

《月に憑かれたピエロ》は自由な無調のスタイルで書かれていますが、カノン、フーガ、ロンド、パッサカリア、自由対位法など、さまざまな古典的な形式や技法が使用されています。

楽器の組み合わせは、ほとんどの楽章で異なります。全アンサンブルが用いられるのは、第6、11、14、15(終盤だけ)、16、18、19(終盤だけ)、20、21番のみです。

演奏を聴いて

開演が5分押しとなったのだが、会場内では諸注意のアナウンスのあと、演奏が始まるまで静寂のときが流れる。

最初から出演者全員が舞台に入り、中江 早希はピエロをイメージしての白いドレスで登場する。

全員が座ったところで照明がおとされ、ピアノの譜面灯だけが光り、まるで月明かりのように照らされる。

その状態でドビュッシーの《月の光》が演奏され、譜面灯の明かりが消される。

間に拍手ははいらずに舞台照明が灯り、そのまま月に憑かれたピエロの演奏が始まります。

《月の光》では、北村さんの優しくも透き通る美しいピアノのタッチに酔いしれました。ピアノという楽器は、奏者によってこんなにも音色が変わるんですね。どこか幻想的な空間で、心穏やかにピアノ作品を楽しむことができました。

《月に憑かれたピエロ》では、第一部の中江 早希のシュプレヒシュティンメのニュアンスに寄り添うように、毛利さんのヴァイオリンが演奏され、相乗効果で妖艶的な雰囲気がより一層伝わり、この作品の魅力を存分に感受できました。

シュプレヒシュティンメというやや特殊な歌唱形態ですが、あくまで語ることにフォーカスをあてながらも、幅広い音のレンジを駆使して表現されていました。オケの流れから逸脱することなく、オーケストラのアンサンブル音に寄り添って語られる様が、音楽全体のまとまりを良く感じれた要因なのかなと予想しました。

音を外すところ、記譜通りの音で歌うところ、トリル(この言い方があっているか不安ですが、バロック音楽のトリルのような唱法と言いたいです)、いろんなジャンルの音楽をこなす中江だからこそできる歌唱技術の高さを堪能できる舞台だったと思います。

横坂さんのチェロのピチカートのニュアンスと音色がとてもはまっていて、器楽アンサンブルの楽しさを感じました。

ここでこれまでの先入観を改めなければと思うことになります。

シェーンベルク=難解と勝手に思い込んでいましたが、歌詞を見ながら楽器の演奏を聴いていると、曲を難解にしていままでの楽曲よりも奇抜にしてやるぞということではなく、この詩の内容を表現するには、調性から抜け出す必要があったという、必要に迫られて出来上がった正統派の音楽表現なんだなと今日の演奏を聴いて感じました。

それほどに密に練られた演奏表現の宝庫で、《月に憑かれたピエロ》の詩がいきいきと表現された、素晴らしい演奏でした!

ブログ記事にするために、色々と文献を調べてから演奏会に行くのですが、調べれば調べるほどこの曲の魅力に取り憑かれてしまう、面白い曲ですね。

今年、もう一度中江 早希のシュプレヒシュティンメを聴くチャンスがあります。こちらも合わせてチェックしていただけますと幸いです。

最後に

前回から二回にわけてラ・フォル・ジュルネTOKYO2024の様子をお届けしました。

どの公演も行ってよかったと思える公演ばかりが揃った、とても楽しい音楽祭でした。来年も開催されたらまた出かけてみたいです。一度も大きな会場の有料コンサートのチケットを取らなかったので、そちらの公演もすでに気になり始めております。

クラシックの音楽祭のこれからの盛り上がりに目が離せません!

なお、ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024に行ってきた様子を動画にまとめたいと考えております。

チャンネル登録していただけますと幸いです。
(※5/10本編動画を公開しました!)


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