23/09/10 音楽風刺劇《オスペダーレ》350年以上の眠りから目覚めた音楽劇、日本初演を鑑賞してきました。

氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。

9月8日、以前より気になっていたラ・フォンテヴェルデさんの第34回定期演奏会、音楽風刺劇”オスペダーレ”を鑑賞してきました。公演概要は以下の通りです。

音楽風刺劇 オスペダーレ

日時 2023年9月8日(金) 19:00開演

会場 Hakuju Hall

ラ・フォンテヴェルデ第34回定期演奏会
音楽風刺劇 オスペダーレ
Dramma bulesco L’Ospedale (anon.ca.1660)
本邦初演 (演奏会形式 /字幕付き)

配役:
恋わずらい:染谷 熱子
愚か者:上杉 清仁
官吏:中嶋 克彦
貧者:谷口 洋介
外国人:鈴木 美登里
医者:小笠原 美敬

バロック・ハープ:伊藤 美恵
チェロ:鈴木 秀美
チェンバロ:上尾 直毅 

口上役:新太 シュン

字幕・照明:大平 久美 (K productions)  

楽譜校訂・翻訳・解説:松本 直美

この日はあいにくの台風直撃の日で、朝から大雨という悪天候な始まりでしたが、オペラの会場時間が近づくにつれて雨も収まってきました。

無事白寿ホールに到着しまして、早速入場すると客席はほぼ満席となっておりました。指定席はこういうとき助かりますね♪

公演が始まると最初に、音楽学者である松本 直美さんの《オスペダーレ》を発見した経緯や、この作品についての説明がありました。

オスペダーレ発見の経緯

松本さんが《オスペダーレ》という音楽劇を発見した経緯は2003年にさかのぼります。当時、松本さんはオペラにおける狂乱の場の起源についての研究を行っておられ、この研究の一環として、ヴェネチアのイタリア国立マルチアーナ図書館で「コンタリーニコレクション」と呼ばれる手稿譜群を調査していました。この中で《オスペダーレ》という作品を発見し、その内容に興味を持たれたそうです。

オスペダーレの物語は、精神を病んだ4人(恋わずらい、感か者、官更、貧者)の登場人物が、非人道的な環境で隔離された施設(オスペダーレ)に収容され、外国人の反対を押し切って医者の治療を受ける過程で、喜劇的な展開が繰り広げられるというものでした。この作品の台本作者はアントニオ・アパーティ (Antonio Abati c. 1600 – October 1667) とされていますが、作曲者に関する詳細な情報は不明瞭で、関連する文献もほとんどなかったそうです。

松本さんは《オスペダーレ》の研究を20年以上にわたり続けられておられますが(ご自身では探偵活動とおっしゃってました)、作曲者についてはこの人かなという候補の方はいらっしゃるようでしたが、この人というはっきりとした答えには至っていないそうです。この状況にもかかわらず、《オスペダーレ》の音楽は非常に魅力的で、その魅力に惹かれた松本さんは校訂譜を作成し、その楽譜を基に、ロンドンで数回の公演が行われました。

最後に、『音楽学者の仕事は、演奏家の力を得て「音」にして初めて意味を持つものです。今度の、ラ・フォンテヴェルデによる日本初演で目覚めようとしているのは、歴史が一旦忘れてしまったこの作品だけではなく、そこに新しい意味を見つけようとする私たちの知的な興奮なのではないでしょうか』と締めくくられます。いよいよ本編が始まります!

《オスペダーレ》日本初演開演

舞台セットは下手側にチェンバロ、チェロ、バロックハープ。中央奥に譜面台4台が並べられここに患者たちが座り、診察の時に中央の丸椅子に出てきます。そして上手側にはお医者さんの机と椅子が配置されています。

新太 シュンさんの口上から始まり、そののちに4人の患者達が来院。自分の病状を嘆くと同時に、医者がなかなか前の患者の診療が終わらないことにイライラしています。そこに外国人が登場し、医者にお金を払って処方してもらうのはバカバカしいと助言しますが、4人共聞く耳を持ちません。忠告だけ済ますと、すんなり外国人は帰っていきます。

入れ替わるように医者が登場しますが、相当貯め込んでいそうな風貌でやってきます。自身の処方の腕を自慢するも早々に、恋わずらい、官吏、愚か者、貧者の順に診察していきます。

一人一人悩みを打ち明け、それに対して適切な処方を言っていくのですが、お医者さんの処方に至るまでが長いwそのことに苦言を呈するも、その処方は素晴らしいと喜ぶ4人。愚か者まではその調子で行くのですが、貧者になると雲行きが怪しくなります。お金のない人には為す術がない、処方箋だってお金と引き換えなのだからとさじを投げます。そのことに言動に怒った患者達は、これまで喜んでいた名処方までもけなしだし、医者を追い出してしまいます。

医者はいなくなってしまったけど、それぞれの病気のことはよくわかったし、各々のやり方で治していきましょうと言う貧者。そして患者たちは自分たちのお財布事情も決して良くはないという現実を嘆き始めます。お金さえあれば、お金さえあれば、、、、。

健康な財布はすべての病気を治す、数ある病気の中で財布の病気が最も酷い病気であると最後は締めくくられます。

鑑賞してみて

どういうストーリーなのか事前に調べようかなと思ったのですが、検索にひっかからず、ちゃんとストーリーが理解できるかなと不安な部分を持ちながら出向いたのですが、そんな心配もいらないほどの面白い内容でした。今回ラ・フォンテヴェルデさんの演奏会に初めていったのですが、成熟されたアンサンブルの美しさに脱帽しました。こんな美しいハーモニーでお金のことを嘆いているというのも不思議な話なのですが、当時の貴族もそういうギャップを楽しんでいたのでしょうか、、。

作曲者はいまだ不明ですが、このメンバーのために作曲されたのではないかと思うほど、それぞれの役がはまっており、とにかく現代にもテーマが当てはまる部分もあり面白い舞台でした。バロックオペラがこんなにも面白いなんてと大満足な演奏会で、観に行ってよかったです。

貧者の診察の場面で採尿してきてくださいというところがあるのですが、舞台袖にはけて採尿している様子を上尾さんがチェンバロで即興表現しており、その音の入れ方が妙にリアルで笑いが起きていましたw 物語では採尿した結果があまり良くなく、その結果に苛立った貧者が検尿容器をぶちまけてやる!と怒るのですが、その様子に慌てた医者が「落ち着いてください、谷口さん!」と言ってしまいます。もちろん間違って言ったわけではなく、字幕もそうなっていたのですが、プログラムについているリブレットではどうなっているのかなと確認してみたところ、こちらも”谷口さん”となっているではありませんかwwwこういう遊び心もあるところも魅力のひとつなのかなと感じました。こういうネタは僕も大好きです♪

X(旧Twitter)上では再演希望と多くの方につぶやかれており、この作品の魅力が多くの方に伝わった舞台となりました。こんなにも美しく、面白い作品なのだから、テレビでも放送すればいいのにと思ってしまいました。本当に素晴らしかったです!!!

終演後お写真を一緒に撮らせていただきました♪

演奏会のご案内

今回のオスペダーレ公演に出演された鈴木 美登里さんと谷口 洋介さんと一緒に出演する公演が10月7日、茅ヶ崎市民文化会館 大ホールにて行われます。

2023/10/07 湘南シティ合唱団第18回演奏会 ヘンデル作曲「メサイア」/バスソリスト

◆開催日:2023年10月7日(土) ◆開催時刻: 開場:13:20 / 開演:14:00 ◆会場: 茅ヶ崎市民文化会館 大ホール ◆演奏: 【演奏曲】ヘンデル作曲「メサイア」 【指揮者】…

そして、今回のオスペダーレ公演にてチェロを弾いていらっしゃった、鈴木 秀美さん指揮で《天地創造》を歌います。日時は12月16日(土)14:00開演/神戸文化ホール大ホールです。合わせてチェックしていただきますと幸いです!