24/02/18 天上の音楽再び。名ホール【しらかわホール】にて愛知室内オーケストラによるマーラーの音楽を楽しみました。
氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。
愛知室内オーケストラ第71回定期演奏会に伺いまして、マーラーの音楽を堪能してきました。その様子を今回の記事にまとめたいと思います。
今回ご紹介する演奏会はこちらです↓
愛知室内オーケストラ 第71回定期演奏会
日時 2024年02月16日 18時45分開演
会場 三井住友海上しらかわホール
指揮 アンドレアス・オッテンザマー
ソプラノ 中江 早希
演目
マーラー/歌曲集「子供の不思議な角笛」から
マーラー/交響曲第4番「大いなる喜びへの賛歌」
管弦楽 愛知室内オーケストラ
最高水準の音響を誇るしらかわホール
1994年に開館した名古屋、伏見にあるしらかわホール。この地域はかつて白川町と言われており、地域の方にその名が親しまれていたことから《しらかわホール》と名付けられたそうです。
座席数700席、残響時間2.1秒と、シューボックス型の優れたコンサートホール。とても素晴らしいホールなのですが、2024年2月いっぱいを持って閉館することになりました。
前回訪れたのは、2021年名古屋フィルハーモニー交響楽団さんのしらかわシリーズで来たときだと思います。その時からこの素晴らしい音響に聴き入っていた記憶があります。
今回の演奏会でもその音響を楽しむことができました。この空間でマーラーの交響曲第4番を聴くことができ、至福の時間でした。
愛知室内オーケストラ第71回定期演奏会プログラム
マーラー/歌曲集「子供の不思議な角笛」からの曲目は以下の通りでした。
1 Rheinlegendchen 2 Verlor'ne Müh 3 Das irdische Leben 4 Wer hat dies Liedlein erdacht? 5 Lob des hohen Verstandes 6 Wo die schönen Trompeten blasen 7 Urlicht |
1 ラインの伝説 2 無駄な骨折り 3この世の生活 4 だれがこの歌を作ったのだろう 5 高い知性への賛歌 6 麗しきトランペットが鳴り響くのは 7 原光 |
演奏を聴いて
オッテンザマーさんの指揮を見るのは実は二回目で、初めてお会いしたのは昨年4月の東京・春・音楽祭、リッカルド・ムーティさんのオペラアカデミー(仮面舞踏会)でした。僕は合唱で参加していましたが、表現したい音の動きが指揮さばきからとても良く伝わってくる、素晴らしい方だなと思っておりました。
今回の演奏会でもその躍動感ある動きを見ることができました。中江 早希の歌の動きとオッテンザマーさんの動きがマッチした時の音楽の動きがたまりませんでした。マーラーの音楽で遊んでいるような、それでいて個性を輝かせているようなとても面白い演奏でした。
冒頭2曲の3拍子の拍子感もとてもワクワクしましたし、テンポの切り替えや、アッチェルのかけ方、アタックの早い音符の表現など、オッテンザマーさんによって引き出された音楽にとても聴き入りました。
特に面白かったのは、5曲目の《高い知性への賛歌》です。ナイチンゲールとカッコウが審査員にロバを迎えてのど自慢大会をするという曲なのですが、中江 早希の引き出しの広さを存分に発揮する歌唱に、曲終わりに笑いと拍手が沸き起こりましたwクラリネットの表現豊かな演奏がとても癖になり、我が家ではずっとその話題で持ち切りでした。とても良かったです!
3曲目のDas irdische Lebenは2022年の【Hypnos-頭蓋骨の戦慄・心奥の悲哀-】という新作楽曲の発表会にて中江 早希の歌唱で聴いたことがあります。このときはピアノ伴奏だったのですが、オーケストラで聴くことができ、個人的に嬉しかったです。
導入部の拍感が面白くてですね、これ弱起の曲なんですよ。歌の入り難しいねと当時ワイワイ言いながら一緒に練習していたのも楽しい思い出です。
↓よろしければ楽譜を追いながら聴いてみてください♪
そしてこの5,6,7曲目の並びが秀逸で、とても良かったなと思いました。
個人的に最も鳥肌が立ったポイントは、7曲目Urlichtの入りです。トランペットの曲終わり、響きが消え無音となった会場に"O Röschen Rot"のoが響いた瞬間、まさしく最初の光が差し込んだような、すべてを導くEsの音だったと思います。音程感といい、その後に導かれて鳴ったオーケストラの音といい、純粋に音楽の素晴らしさに触れたような気持ちになりました。
同じくこの曲はマーラーの交響曲第2番のアルトソロにも登場します。ソプラノでの歌唱で聴けたのはかなりレアだったのではないでしょうか。マーラーの交響曲第2番でのUrlichtはDes-Durですが、今回の演奏調は一音高いEs-Durでした。
後半の交響曲第4番では、ソリストは後方バルコニーからの歌唱でした。歌曲のときと歌唱位置が変わった結果、より響きが増し、天上の音楽にふさわしい演奏だったと思います。終演後は長い静寂の後、惜しみない拍手と歓声が送られました。
バックステージの写真は僕が撮影しました。3人で写っているものが中でも気に入っていただけたようです。良かったら見てください。
中江 早希のソロでのマーラーの交響曲4番は、読売日本交響楽団さん、仙台フィルハーモニー管弦楽団さん、群馬交響楽団さんとの演奏を聴いたことがあります。どれも素晴らしく、その中でもテレビでも放送された高関 健マエストロ指揮、読売日本交響楽団さんとの演奏をお聴きになった方も多いと思います。
もっと多くの方に聴いていただけるように、CDにならないかなぁとか夢見てみたり。とても幸せな気持ちで会場を後にしました。
しらかわホールでの、オーケストラと声楽の演奏は中江 早希の歌唱が最後となります。とても良いホールなだけに、無くなってしまうのはとてもさみしいです。しかしながら最後にこの名演を聴けたということに特別なものを感じたのも事実です。この素晴らしい瞬間に立ち会うことができましたこととても嬉しく思いました。