24/07/19 音楽は一期一会、歌曲の魅力を堪能するひととき。中江 早希ソプラノリサイタルを聴きに行ってきました。

氷見健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。先日ハクジュホールで行われました、中江 早希ソプラノリサイタルの様子をこの記事ではまとめたいと思います。

今回ご紹介する演奏会はこちら↓

中江早希ソプラノリサイタル

日時 2024年7月13日(土)  14:00開演(13:30開場)

 会場 ハクジュホール

   東京都渋谷区富ヶ谷1丁目37-5

出演者

中江 早希(ソプラノ)

川口 成彦(ピアノ)

プログラム:

シューマン作曲「女の愛と生涯」

シェーンベルク作曲「4つの歌曲」op.2

ツェムリンスキー作曲「トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌」op.6 他

いざハクジュホールへ

今回は代々木八幡駅より向かいました。ハクジュホールはこちらの駅より徒歩5分と大変好立地です。ぼっち・ざ・ろっく!の看板があったので撮影しておきました。

この日はとても良い天気に恵まれ、歩いていてもとても気分が良かったです。駅からはまっすぐ道なりに進み、交差点を渡って一度曲がるだけですので、とてもアクセスはわかりやすいです。いつもは夜公演に出向いていたので、昼歩くのは個人的に斬新でした。素敵なお店もたくさんあり、余裕を持って出向くのもありかもしれません。

会場に到着

中に入るとおなじみのあの絵がお出迎えしてくれました。こちらの作品はフランス製で、作品名は《アダムとイヴ》だそうです。

写真が逆光になってしまっていますが、素敵なお花が沢山届いていました。今回の演奏会のために委嘱作品をかいてくださった、二橋 潤一先生からのお花もありましたね。

会場のロビーにはCDの販売コーナーも設けられていました。

プログラムを受け取り会場へ入ります。

ハクジュホールって本当に素敵なデザインなんですよね☆側面のライトもとても良い味をだしています。

座席の背もたれのクッションが気持ちよかったです。こちらのシートはリクライニングもできるらしいです。

ハクジュホールは客席数300席、残響時間は1.5秒です。

今回のプログラム

阪田 寛夫 作詞 中田 喜直 作曲
魚とオレンジ

1. はなやぐ朝
2. 顔
3. あいつ
4. 魔法のリンゴ
5. 艶やかなる歌
6. ケッコン
7. 祝辞
8. らくだの耳から(魚とオレンジ)

三木 露風 作詞 山田 耕筰 作曲
風に寄せてうたへる春の歌

1. 青き臥床をわれ飾る
2. 君がため織る綾錦
3. 光に顫ひ 日に舞へる
4.たゝへよ、しらべよ、歌ひつれよ

桜木 紫乃 作詞 二橋 潤一 作曲
三つの詩によるソプラノとピアノのための歌(委嘱作品)

1. ふと 生きて
2. 菩提樹の歌
3. 雨に描く

ー 休憩 ー

F. グレゴロヴィウス(F. Gregorovius)作詞
A. ツェムリンスキー(Alexander von Zemlinsky)作曲
トスカーナ 地方 の 民謡 によるワルツの 歌
Walzer Gesänge nach toskanischen Volksliedern Op.6

1. かわいいツバメ Liebe Schwalbe
2.月が悲しそうに昇ってきた Klagen ist der Mond gekommen
3.小さな窓よ、おまえは夜閉じている Fensterlein, nachts bist du zu
4.私は夜にそぞろ歩く Ich gehe des Nachts
5.青い小さな星 Blaues Sternlein
6.私は手紙を書いた Briefchen schrieb ich

1~3. リヒャルト・デーメル(Richard Dehmel)作詞
4.ヨハネス・シュラーフ(Johannes Schlaf)作詞
A.シェーンベルク(Arnold Schönberg)作曲
4 つの歌 4 Lieder Op.2

1. 期待 Erwartung
2. ぼくにあなたの金色の櫛をください Schenk mir deinen goldenen Kamm
3. 高揚 Erhebung
4. 森の日差し Waldsonne

アーデルベルト・フォン・シャミッソー(Adelbert von Chamisso)作詞
R. シューマン(Robert Schumann)作曲
女の愛と生涯
Frauenliebeund Leben

1. あの人をみたときから Seit ich ihn gesehen
2. 彼はすべての人にまさって Er, der Herrlichste von allen
3. わたしは分からない、信じられない Ich kann’s nicht fassen, nicht glauben
4. わたしの指にはめられた指輪よ Du Ring an meinem Finger
5. 手伝ってちょうだい、妹たち Helft mir, ihr Schwestern
6. いとしい人よ あなたは見つめる Süßer Freund, du blickest
7. わたしの心に、わたしの胸に An meinem Herzen, an meiner Brust
8. いまあなたは初めてわたしに苦痛を与えました Nun hast du mir den ersten Schmerz getan

アンコール

石川啄木 詩 / 越谷達之助 作曲
初恋

演奏を聴いて

第一部は日本歌曲でまとめられました。中江は紫のドレスで登場。

リサイタルの一曲目は《はなやぐ朝》ではじまります。演奏会のオープニングにふさわしい一曲で、華やかさと日本歌曲の美しさを兼ね備えたナンバーに、この演奏会への期待が高まります。

この曲集は《はなやぐ朝》しか聴いたことがなかったのですが、今回の演奏会で初めて曲集を通して聴きました。
曲集で描かれる主人公がいろんな思いを抱きながら人生を歩み、終曲の《らくだの耳から》で冒頭の《はなやぐ朝》の旋律が戻ってきたときの感動はひとしおでした。

この曲の魅力はただ単に美しく歌うだけでは成立しないことです。それぞれの曲のシーンに寄り添った表現を追求しなければいけないと感じました。この曲の多様性を見事に歌唱する中江の演奏にとても引き込まれました。セリフ調の部分もあり、中田 喜直さんも面白いことを考えるなぁととても楽しみながら聴かせて頂きました。

極端な部分で言えば《ケッコン》ですよねw狭い部分に声を集めた風変わりな発声に切り替えて歌うのですが、ノンビブラートの効果と相まって、日本の和の感じの旋律が結構相性が良いんですよね。違和感のある音色なのに、どこか伸びやかな美しさもある、興味深い世界観でした。「ご結婚でぇーす!(拍手)」には笑いをこらえる人の声にツボりました。芸の幅の広さに脱帽。

二橋 潤一さんの楽曲は愛をテーマに作曲された3曲からなる曲集。愛と一言で言ってもいろいろな愛の形があり、今回の曲集ではそれぞれカラーの異なった愛を表現したとのこと。一曲目は”けだるい愛”。「ふと」という歌いだしにそれぞれニュアンスが異なるのもどこか味わい深い曲でした。ふと生きる、ふと出会うの流れが好きでした。

2曲目の菩提樹の歌は、とても激しめなピアノの前奏が印象的。このテーマは間奏でも何度も現れます。激しさだけでなく、「冬の芽」からの詩の世界観の広がりがアルペジオにのせて紡がれる瞬間の美しさに、二橋さんの音楽性に引き込まれました。

これまでの2曲を聴いてからの3曲目に心の平安、安らぎ、明日へ歩んでいく希望を感じました。

やはり実際に演奏会に出向いて音楽に耳を傾けなければ出会えない気持ちってあるんだなと改めて思いました。音楽は一期一会。行けるときには積極的に出かけなければなりませんね。

会場には二橋さんもいらっしゃっていました。惜しみない拍手のなか前半終了。


ピアノの川口さんとの息の合った演奏に後半のドイツリートも聴き入りました。ピアノの音色ってこんなにも豊かなんだと、情景、心情に寄り添った音色が光ります。特に弱音の箇所で感じられ、その世界観にずっと聴いていたいと思えるほどでした。

中江の歌い方を模倣したり、曲のおいしいところを上品に紡いでくださるのが心地よかったです。

どの曲も素晴らしかったのですが、ツェムリンスキーの歌曲がやっぱり好きですね。

今回のプログラムの量にも驚きましたが、休憩込みで2時間ありました。こんなに聴けて大満足です!!また聴きたいです。

最後に

この記事では中江 早希ソプラノリサイタルを聴きに行った感想をまとめました。

世界観といえば、7月27日、洗足学園音楽大学シルバーマウンテン2階にて月に憑かれたピエロに中江が出演します。シェーンベルクの音楽を明瞭な解像度で紡ぐアンサンブルに映像が加わった次回の注目公演です。

こちらのページにて詳細情報を案内しております。合わせてチェックしていただけますと幸いです。


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