24/05/03 ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024『ORIGINES(オリジン) ー すべてはここからはじまった』初日を楽しんできました。
氷見 健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024『ORIGINES(オリジン) ー すべてはここからはじまった』に行ってきました。その様子をこの記事ではまとめたいと思います。
ラ・フォル・ジュルネとは
ラ・フォル・ジュルネは、1995年にフランスのナントで始まった音楽祭で、毎年テーマ作曲家やジャンルを設定し、同時並行的に複数の会場で約45分のコンサートが開催されます。
ルネ・マルタン氏(アーティスティック・ディレクター)の「一流の演奏を気軽に楽しんでいただき、明日のクラシック音楽を支える新しい聴衆を開拓したい」という思いから、入場料は低価格に設定されています。
ユニークなコンセプトで展開されるラ・フォル・ジュルネの人気は国外へも拡がり、2000年からポルトガルのリスボン、2002年からはスペインのビルバオ、2005年からは東京国際フォーラムで開催されました。
テーマは時代やジャンルを超えたプログラムに基づいており、2018年からは「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」という名前に変更されました。
会場に到着
JR有楽町駅直ぐ側の東京国際フォーラムが会場ということで、アクセスがとても便利でした。入口には《世界最大級のクラシック音楽祭!》と書かれた看板が掲げられていました。
ここから地下へのエスカレーターを降りると、メインの会場に繋がります。建物沿いにはキッチンカーや、無料でコンサートが楽しめるように、野外ステージが設営されていました。
エスカレーターからの景色はこのようになっておりまして、多くの人が集まって楽しんでいる様子から人気の高さがうかがえます。
演奏系の設備の他にCD販売や、楽器店さんのPRブースもあり、その中でもミニコンサートが開催され、賑わっていました。僕が滞在していた時間だけでも、ピアノの独奏、管楽器のアンサンブル、ヴァイオリンのソロ、そしてハープの演奏などなど、幅広いジャンルの音楽が楽しめました。
有料コンサートを楽しむ
この音楽祭の楽しみのひとつ、有料コンサートを聴いてきました。150席の空間から、5000席を超える大きなホールと、5種類のホールが用意されていました。
今回はその中でも一番小さな、東京国際フォーラム ホールG409:グラツィオーソでの演奏会を楽しんできました。聴いてきた演奏会は以下の通りです。
すべてはモーツァルトから始まった!
日時 5月3日 (金・祝) 13:30 〜 14:15
会場 東京国際フォーラム ホールG409:グラツィオーソ
ウィーン古典派から新ウィーン楽派へと受け継がれた、詩情あふれるドイツ・リートの伝統。
出演 天羽明惠 (ソプラノ)、 村上寿昭 (ピアノ)
曲目
モーツァルト:すみれ K.476、ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いたとき K.520
シェーンベルク:4つの歌曲 op.2 から 1.期待、2.僕に君の金の櫛を贈ってくれーイエスの懇願
ベルク:7つの初期の歌 から 葦の歌、夜うぐいす
ツェムリンスキー:バラのイルメリン op.7-4、民謡 op.22-5
ウェーベルン:4つの歌曲 op.12 から 1.日は暮れて、4.似た者同士
ウルマン:5つの愛の歌 op.26 から 1.お前はどこからその全ての美を受けたのだ、2.ピアノを弾きながら、5.おお、美しい手よ
(アンコール)モーツァルト:クローエに K.524
俊英・北村朋幹の今を聞く:日本が世界に誇る現代作曲家HOSOKAWAの、精緻かつダイナミックな美の世界。
日時 5月3日 (金・祝) 15:15 〜 16:10
会場 東京国際フォーラム ホールG409:グラツィオーソ
曲目
細川俊夫:メロディアⅡ
細川俊夫:エチュードⅠ-Ⅵ
(アンコール)細川俊夫:喪失(世界初演)
ホールG409:グラツィオーソ
こちらの会場はメインスペースにあるエレベータで4階に上がったところにあります。会場にはピアノが中央に配置され、それを囲むように客席が設営されています。ホールとは違う環境なのですが、奏者と近い位置、そして同じ高さで演奏を楽しむことができます。細かな表現がまるで一緒に演奏しているかのように伝わってくる空間でした。
演奏会が始まると照明が落とされるのですが、奥のろうそく型のランプがいい味を出していましたね。天羽さんの演奏会の時は、半分明かりが残っている設定にされ、演奏と一緒に歌詞対訳を眺めながら楽しめるように。北村さんの演奏会のときには、完全に部屋の明かりを落として、間接照明だけにし、音だけに集中できるようにといった工夫がされていました。
演奏を聴いて
天羽さんの演奏会《すべてはモーツァルトから始まった!》では、モーツァルトからウルマン(ullmann)までのリート(ドイツ歌曲)を、トークを挟みながら進行していくという内容でした。
調性のあるものから、無調に変わっていく様子。それぞれの作曲技法を生かした名曲を、45分という短い時間のなかで味わうことのできる、良いプログラムでした。
12音技法など用いる近現代の作曲家に馴染めないと、名前を見ただけで敬遠しがちですが、作曲家の生涯の中で作曲スタイルが異なることもあり、こういう曲も書いているんだと僕自身驚いたことがあります。
ベルクもそうで、ヴォツェックやルルを観て、これはすごいなと思っていたのですが、今回演奏された葦の歌(Schilflied)もとても美しい曲ですよね。
演奏会の中でヴィクトル・ウルマンという作曲家の作品との出会いをいきいきとご紹介してくださったのがとても印象的で、リート愛溢れる歌唱に心が奪われました。
村上さんのピアノ演奏も、東京文化会館でのオペラナンバーの演奏会で聴いたのが記憶に新しいですが、今回はリートということで、また違った味わいを感じました。職人の如く、リートの繊細な表現を確実に紡いでいく様がとてもかっこよかったです。
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北村さんの演奏会では、初めて細川 俊夫さんの作品を聴きました。簡単なプロフィールをご紹介します。
細川 俊夫
1955年に広島で生まれ、1976年から10年間ドイツで留学。ベルリン芸術大学でユン・イサン、フライブルク音楽大学でクラウス・フーバーに師事。1980年にダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に初参加し、以後ヨーロッパと日本で作曲活動を展開。日本を代表する作曲家として、欧米の主要なオーケストラや音楽祭から委嘱を受け、高い評価を得る。作品には2004年のエクサンプロヴァンス音楽祭のオペラ《班女》、2005年のザルツブルク音楽祭のオーケストラ作品《循環する海》、2010年の《夢を織る》(クリーヴランド管弦楽団による世界初演)、2011年のモネ劇場のオペラ《松風》、そして《ホルン協奏曲─開花の時─》などがあり、これらの作品は世界一流の指揮者たちによって初演され、その後も多くの場で演奏されている。
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音楽祭が音楽や、溢れる人の声などで賑やかになっているなか、北村さんの演奏会の会場では静寂の空気のなか、美しい旋律と音色を堪能しました。
限られた照明の暗い空間で、わずかな空調の音しかしない緊張感すら感じる環境で聴いた《メロディアⅡ》は本当にすごかった。お客さんで満席なのに、咳はもちろん、何一つ物音のしない高い集中力に包まれた演奏会は多分初めての経験だったかもしれません。
細川さんの作品で、この静けさと弱音表現の融合したところに特に魅力を感じました。北村さんのピアノ表現は多彩で、繊細さを常に持ちながら鳴り響く一音一音に、とても引き込まれる演奏でした。
家に帰ってから、細川さんの作品を調べては聴きを繰り返しているのですが、来年新国立劇場で新作オペラが上演されるのを発見しました。これは要チェックですね。
有料コンサートのチケット半券で
有料コンサートのチケットを持っていると、<ホールE>のブースにも入ることができます。こちらでは、カフェ、グッズショップ、ここでしか楽しめないイベント、コンサートなどを更に楽しむことができます。
演奏会に向かっている途中に、通路からその様子をみることができて写真を撮ったのですが、こんな大編成の音楽まで聴けちゃうのは嬉しいですね。
最後に
今回は、ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024『ORIGINES(オリジン) ー すべてはここからはじまった』初日の様子をお届けしました。
こちらのイベントは5月5日まで行われます。国際フォーラムだけでなく、東京駅前にあります丸ビルでのステージがあったりと、いろいろなところで盛り上がりを見せる音楽の祭典。無料で楽しめるスペースもかなり充実しているので、この機会にクラシック音楽イベントを楽しんでみてはいかがでしょうか?
↓こちらの様子は後日動画にまとめようと考えています。よろしければチャンネル登録していただけますと幸いです。
(※5/10本編動画を公開しました!)