2024/03/16 躍動の第九。オーケストラ・アンサンブル金沢第479回定期公演を石川県立音楽堂にて鑑賞してきました。
氷見健一郎公式サイトをご覧下さりありがとうございます。
今回は石川県立音楽堂にて行われました、オーケストラ・アンサンブル金沢第479回定期公演フィルハーモニー・シリーズ困難を抜けて遂に歓喜へ。ミンコフスキの第九に行ってきたので、その様子をまとめたいと思います。
この公演は2020年のベートーヴェンイヤーに合わせてベートーヴェンの交響曲の全曲演奏される予定でしたが、コロナ禍の影響によりそれが叶いませんでした。2021年より、4公演にわたり全曲演奏会が開催されてきましたが、唯一まだ演奏されていなかったのが今回の交響曲9番(合唱付き)だったのです。
ついに実現した、全曲公演の締めくくりとなる感動的な第九公演の様子を、少しでもお伝えできますと幸いです。
今回紹介する公演はこちらです↓
オーケストラ・アンサンブル金沢第479回定期公演フィルハーモニー・シリーズ困難を抜けて遂に歓喜へ。ミンコフスキの第九
開催日程 3 / 15 (金) 開場 18 : 00 開演 19 : 00
会場 石川県立音楽堂 コンサートホール
出演者
指揮 マルク・ミンコフスキ
ソプラノ 中江 早希
メゾソプラノ 中島 郁子
テノール 小堀 勇介
バス 妻屋 秀和
管弦楽 オーケストラアンサンブル金沢
合唱 東京混声合唱団
石川県立音楽堂について
3月16日に敦賀まで延伸したことで盛り上がりをみせる北陸新幹線に乗り、石川県へやってきました。東京駅から金沢駅までは約2時間半で到着できます。今回の演奏会でも、終演後新幹線に乗れば、その日のうちに東京へ戻れるという点もアピールされておりました。
石川県立音楽堂はJR金沢駅兼六園口(東口)より徒歩1分という好立地にある音楽ホールです。客席数約1500席、シューボックス型のコンサートホール。残響時間 は、1.8~2.2秒(満席時)です。
シューボックス形式は、クラシック音楽のための長方形のホール形式で、側面からの反射音が豊かな響きを生み出します。1781年にライプツィヒのゲヴァントハウスで初めて使用され、有名なオーケストラが本拠地とするホールに多く採用されています。
会場は三階までありますが、今回は1階席の中央位置の座席で鑑賞しました。
会場に入ると大きなスクリーンが!
オルガン前に大きなスクリーンがあり、今回の出演者の紹介が大きく投影されていました。その他これからの演奏会の案内や、公演の感想アンケートのQRコード、SNSの宣伝などがループで流れていました。
このスクリーンがどれくらい大きいかといいますと、
この大きさでございます♪開演5分前のアナウンスがはいると舞台上が明るくなり、スクリーンは格納されていきました。
この演出が映画館の広告から本編に切り替わるときのように感じられて、演奏会へのワクワク感が高まりました。
パイプオルガンもとても素敵ですね♪
マルク・ミンコフスキ
オーケストラ・アンサンブル金沢の桂冠指揮者である、マルク・ミンコフスキさんは、指揮者としてのキャリアを19歳でスタートしました。フランスのバロック期からモーツァルト、ワーグナーなど幅広いレパートリーを手がけられています。
オペラ指揮者としては、パリ・オペラ座やウィーン国立歌劇場など世界の名だたる劇場で活躍し、コンサートでも東京都交響楽団やベルリン・フィルなどに客演し、高い評価を得られています。
2011年にはレ・マジェール音楽祭を創設。2018年からはOEK芸術監督を務められ、同年、レジオンドヌール勲章シュヴァリエも受章されています。
ソリストの入りなど
今回のソリストの入りは1楽章入り。歌唱位置はオーケストラと合唱の間の場所でした。
第九の演奏の前に、能登の地震や、小澤 征爾さんの訃報を受けバッハのG線上のアリアが最初に演奏されました。その後静寂の時間が流れ、そのまま交響曲第9番へ移ります。
ミンコフスキさんのアイディアによるものだと思われますが、4楽章フーガ部分以降からソリストも合唱パートに加わります。ソロカルテット以降合唱団と一緒に歌ってくださいというパターンは経験ありますが、フーガ部分からソリストが立ち上がるのはとても斬新でした。
テノールのソロ(マーチの部分)はソリスト位置から後ろに移動し、合唱団の最後列の段上に上がり舞台センターで歌われました。この位置がとても響きの良い位置で、小堀さんの美声が更に響き渡り会場を魅了しました。
この時男声コーラスは座った状態で歌唱するのですが、このアイディアは音楽的にもとても良くて、ソロ、コーラス、オケ、それぞれの音のコントラストが明瞭になりました。テノールソロの最後はかき消されるのが常と思っていたのですが、純粋にこれは凄いと感動しました。
演奏を聴いて
ミンコフスキさん×アンサンブル金沢さんの演奏は、躍動感あふれる素晴らしい演奏でした。今回特に感じたのは”休符”の魅力でしょうか。休符のニュアンスで音のカラーが巧みに表現され、こんな第九は聴いたことがないと思うほどきらびやかな演奏でした。
立ち上がりの早い音で奏でられる第1楽章、第2楽章ではとても高い集中力が求められる緻密な演奏が楽しめました。フェルマータ部分の伸ばしの音も大方拍通りで次に向かうというテンポ設定で、ストーリー展開が次々の繰り広げられるドラマを観ているような感覚で目が離せませんでした。
次はどんな展開になるのかなと期待が高まりつつ迎えた3楽章。この緩急の差にやられました。遅い、速いではなく、関連性を持ったテンポ感といいますか、楽章の移り変わりの魅力を教えてもらえた気がしました。3楽章は他の楽章の表現とは色合いが異なり、テンポ感も柔軟で、歌曲を聴いているように感じました。
4楽章ではまたキビキビした表現に戻り、緩むところの少ないタイトな音の表現でレチタティーヴォ部分が紡がれます。第九のテーマ部分が個人的今日の演奏会最大の収穫で、密度の濃い長いフレーズは聴いていてとても心地良かったです(詩人であればもっと良い表現でお伝えできると思うのですが、語彙が少なくて申し訳ない!)。
ミンコフスキさんの4楽章冒頭の表現に準じた妻屋さんのバスソロの貫禄。やはりこのソロはバスで聴きたいと改めて惚れ込む歌唱でした。先程言及した第九のテーマの表現にバスの歌声、歌詞が加わり、より世界観が広がる感じがとても素晴らしかったです。
東京混声合唱団さんはハーモニーのピッチが正確で聴いていてとても心地よかったです。最近よく髙田 三郎さんの水のいのちという曲を東京混声合唱団さんの演奏で聴いていて、その表現の豊かさにうっとり聴き入っていたのですが、実際に聴くとそのアンサンブル力の高さに、第九のハーモニーってこんなに美しいんだとベートーヴェンの楽曲の素晴らしさを再認識させて頂きました。
今回代役で出演した中江 早希は、ミンコフスキさんの指揮の表現に合わせた巧みな歌唱を披露しました。和声に沿った美しい音程感、弦楽器の音のニュアンスと同調した歌いまわしに聴いていてとても高揚感を感じました。声量ももちろんあるのですが、それよりも際立って音楽表現で聴かせてくれる、とても魅力的なソプラノソロでした。
今回オーケストラ伴奏では初めて北陸でソロを歌い、オーケストラ・アンサンブル金沢さんとも初共演でした。これをきっかけにまた北陸での演奏の機会が訪れることを願ってやみません。
最後に
石川県立音楽堂のコンサートホールに来たのは約10年ぶり。北陸登竜門コンサートという企画で井上道義さん、オーケストラアンサンブル金沢さんと共演させていただきました。
その時以来となりましたが、同じコンサートに出演したバストロンボーン奏者の森川 元気さんと再会。色々とお話することができてとても嬉しかったです。
実はその時中江も聴きにきていたということで、とても驚いた表情を見せてくださったのですが、写真がでてきたのでここにも載せておきます♪
最後に素敵なソリストとマエストロの写真を撮影させて頂き、とても良い滞在となりました。また金沢来たいです!